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「商談会」改革、信頼築く 朝倉地域の農産品が都内百貨店に進出

高島屋新宿店で開かれた「福岡・あさくら復興フェア」
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 東京の百貨店で今月、JA筑前あさくら(福岡県朝倉市)管内の農家が参加した販売会が開かれた。商談会という厳しい「地区予選」をへて、バイヤーとの信頼関係を築く手法が、都内百貨店への進出に結びついた。主導した農林中央金庫(農林中金)福岡支店の担当者は「今回の成果を元に、さらに結果を出していく」と語った。 (中村雅和)

 今月5~8日。東京の高島屋新宿店で開かれた「福岡・あさくら復興フェア」には、福岡県南で生産が盛んなブドウやモモ、特産イチジク「とよみつひめ」に加え、高級イチゴ「あまおう」を使ったジャムなど加工品が並んだ。

 同JAが、都内の百貨店に進出するのは、初めてだった。フェアは買い物客でにぎわった。生産者やJAの職員も会場に立ち、接客を通じて、首都圏の消費者の声を吸収した。

 高島屋とJA筑前あさくらは現在、特産の柿「秋王」を秋冬の商戦に出品するか、交渉している。

 フェア開催に尽力した農林中金福岡支店の一瀬康平氏は「販売イベントで、生産者が東京まで出向くのは珍しい。作り手の顔が見えれば、知名度は高まる。継続的な取引の道も開ける」と語った。

 今回のフェアは、高島屋側が持ちかけた。

 もちろん、平成29年の九州北部豪雨からの復興を支援しようという意識は強い。それも、同JA管内の農産物の商品価値を、高島屋が認めたことが大前提としてある。

 フェアのきっかけは、今年1月24日、農林中金福岡支店などが開催した商談会だった。

 同支店は23年から、九州・沖縄各県の農協や漁協と商談会を共催する。従来、地場スーパーのバイヤーを対象にしてきた。だが、回数を重ねるに従い、参加者数や成約率が頭打ちとなってきた。

 新たな販路を求めて、方向性を大きく変えた。

 まず、バイヤーを東京や大阪の百貨店、高級スーパーに限定した。前年1月の商談会では、97社からバイヤーを招いたが、今回は6社にした。

 生産者側も「ふるい」にかけた。昨年秋から、商品の特徴などを提出してもらい、バイヤー側とも協議しながら、商談成立の可能性がある生産者を絞った。

 この「事前審査」では、百貨店などバイヤーから、辛辣(しんらつ)な指摘が出た。

 「商品のコンセプトが高級店の業態にそぐわない」「品質は問題ないが、包装が安っぽく、契約できるレベルではない」

 結局、九州・沖縄から商談会に参加したのは、32の生産者だった。前年の商談会の82生産者の4割にまで絞り込んだ。

 こうした準備によって、延べ91件の商談を、すべて事前にスケジュールを組んで実施した。

 通常、商談会では生産者側がブースを出し、バイヤーが訪問する。それも逆転させた。バイヤーのブースを、生産者側が訪ねるようにした。

 参加した高島屋のバイヤーは「10社ほどと商談し、4社と話を進めている。あらかじめこちらの要求に、対応してもらっているので、話が進めやすい。生産者側も積極的で、商談会が一方通行にならなかった」と語った。

 JA筑前あさくら販売開発課の矢野貴久氏は「バイヤーの指摘は、今後の商品開発に非常に参考となる。生産者にとって、得られるものが大きい商談会だった」と語った。

 成約率は高かった。91件の商談のうち、商談会から半年後までに2割で契約に結びついた。昨年の成約率は7・4%だった。

 濃密な商談会を通じて、バイヤーと生産者の関係は近づく。商談会翌日の1月25日には、高島屋のバイヤーが、朝倉市の農家を訪れ、被災地を含め、現場を視察した。これが7月のフェアにつながった。

 また、商談会に参加できなかった生産者には、次の機会に生かせるように、農林中金がバイヤーからの意見を伝えた。

 農林中金福岡支店の取り組みは、バイヤーの心をつかんだといえる。

 安倍晋三政権は、農業の成長産業化を目指す。農林中金を含むJAグループは、農業者の所得増大など3つの目標を掲げ、「自己改革」に取り組む。

 そこで、需要開拓や、マーケットイン、すなわち買い手の立場になった事業方式への転換を打ち出す。

 一方、地方の人口が減少する中で、全国の生産者は東京や大阪など大消費地を狙って、しのぎを削る。

 競争を通じて、各産地や生産者が工夫することが、農水産業の成長へのエンジンとなる。その芽生えが福岡にもある。

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