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九州北部豪雨1年 仮設暮らし続く1100人に迫る退去期限、進まぬ再建に不安

九州北部豪雨の被災者が暮らす福岡県朝倉市の仮設住宅
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 昨年7月の九州北部豪雨で被災した福岡・大分両県では、今も約1100人が避難生活を余儀なくされている。身を寄せる仮設住宅の退去期限まで約1年だが、山間部の防災対策完了は5年先になる見通し。二次災害の恐れがある元の集落での生活再建は困難だ。今年も、西日本豪雨で大きな被害が出た。全国各地が毎年のように豪雨災害に見舞われており、専門家は実情に応じた被災者支援が必要と指摘する。

 ■集落崩壊

 「避難生活はもう1年になるのに、帰るかどうか悩んでいる」

 福岡県朝倉市の仮設住宅で娘と孫の3人で暮らす小島キヨ子さん(76)の心は、来夏に迫る退去を前に揺れている。住んでいた松末地区の山間集落は5人が犠牲になった。自宅は浸水だけでかろうじて無事だが、近所の家は全て濁流にのまれた。

 集落の田畑は土砂に埋もれ、親しかった住民たちは元の場所での自宅再建を諦めた。小島さんは「雨が降ると不安だし、誰もいない所に1軒だけ帰るのも心細い」と胸の内を明かす。

 ■原則2年

 豪雨直後、福岡・大分両県の避難者は最大約4600人に達した。道路や水道などのインフラ復旧に伴い徐々に解消し、現在は福岡1032人、大分94人。仮設住宅のほか、自治体が民間賃貸住宅を借りた「みなし仮設」などで仮暮らしが続く。

 家賃負担はないが、仮設に住めるのは原則2年。内閣府の防災担当者は「自宅を失った被災者が住まいを確保するまでの、あくまで応急的措置」と説明する。

 西日本豪雨や東日本大震災など、地域全体が破壊された「特定非常災害」指定の場合は、入居期限が延長でき、平成28年の熊本地震では約8700世帯のうち6割が入居継続を選んだ。

 ただ九州北部豪雨を含む多くの災害は対象外。平成23年の紀伊半島豪雨は例外的に、奈良県が公営住宅建設の遅れを理由に独自判断で延長した。

 タイムリミットまでに自宅の建て直しや賃貸住宅などへの転居を迫られる避難者。自治体は相談会や資金面で支援メニューを示し、住宅確保を後押しする。朝倉市は退去後の受け皿となる災害公営住宅も建設予定だ。

 ■判断保留

 ただ住み慣れた古里への住民の愛着は強い。市が実施した松末地区107世帯の意向調査では、41%が「元の場所に住み続ける」と回答。他の地区への転居希望は10%にとどまった。

 一方、地区を流れる赤谷川は応急復旧を終えたばかりで、砂防ダムや河川拡幅などの防災対策工事が完了するのは5年後になる見込みだ。

 自宅が住める状態で残っていたとしても集落に戻れば、二次災害の危険におびえながら過ごすことになる。調査では34%が「現時点では判断できない」とし、決断に踏み切れないでいる住民の姿が浮かぶ。

 東日本大震災の避難者を支援する東北工業大の新井信幸准教授(建築計画)は「避難者が元の集落に戻りたい気持ちと、不安感の間で悩むのは当然だ。行政は住民に寄り添い、安全が確保されるまでは入居期限の延長を含め、柔軟な対応をするべきだ」とした。

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