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【拓け信州 2018知事選を前に】(下)松本大学総合経営学部観光ホスピタリティ学科・山根宏文教授(64)

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【拓け信州 2018知事選を前に】
(下)松本大学総合経営学部観光ホスピタリティ学科・山根宏文教授(64)

 ■二次交通整備で観光客誘致

 --長野県が観光戦略を描く上で最大の課題は

 「県内の二次交通が悪すぎることです。インバウンド(訪日外国人旅行者)が急増しているが、外国人はレンタカーをほとんど使わない。年配の日本人旅行者も同様です。それなのにJRの駅と観光地、あるいは観光地同士を結ぶ二次交通のあり方が、ほとんど考えられていない」

 --二次交通の整備は、どう進めるべきか

 「参考にすべき事例があります。瀬戸内海に浮かぶ香川県の直島は現在、美術館を核にした『アートの島』として人気が上昇している。観光地間を結ぶバスルートに、診療所や農協などの生活拠点を挟み込んだんです。『公共』と『観光』が共存でき、1時間に1本だったバスが15分に1本運行されるようになった。利便性が高まり、観光客と住民の双方にとって、地域の魅力が増した好例だといえます」

 --今後、他県との競争はますます激しくなる

 「観光は『感動産業』です。旅行者にどれだけの感動を与えられるのかが大切になります。それには観光施策の立案者や、接客など観光の実務に携わる人が、自分の足で各地を回り、何に感動したのか、具体的に説明できなければならない。そうでなければ旅行者に感動は伝わらない」

 --日本アルプスに代表される自然景観と多くの温泉など、長野は観光資源に恵まれている

 「上高地では完全に景観が守られているのに、それ以外の観光地では、どこも醜いのぼり旗や看板、自動販売機といった人工物が林立している。自然の美しさを取り戻さなければ、真の魅力を発信できません。『世界水準の山岳高原リゾート』をうたうなら、人工物の排除を徹底的に進める必要があります」

 --旅行の形態が、団体から個人へ変わった

 「団体旅行の時代は、完全に終わった。今は個人と女性にターゲットを絞るべきです。旅行商品でも、グルメやスイーツをテーマとした気軽な旅に人気が集まっている。これからは、『食』が観光客をひきつける時代になります」

 --長野がアピールできる「食」は

 「野菜と果物です。県土の大半は標高の高い土地で、日照時間が長く寒暖差が大きい。雨量も少ないため、野菜や果物の品質の高さは随一です。どこにも負けない品質なのに、観光施設で出されるのは、価格の安い他県産のものが多い。コストを抑えることを優先し、地元産の良さを認識していない。肉でも魚でもなく、野菜と果物で勝負した方がいい」

 --野菜で他県に負けない料理とは

 「野菜の天ぷらがある。植物油を使って新鮮な野菜を旅行者の目の前で揚げて供せば、喜ばれますよ。宗教などの制約に縛られず、万人が食べられる。旬の野菜を振る舞えば、四季の変化も楽しんでもらえる」 (太田浩信)

                   ◇

 ■県内の観光の現状 観光庁の平成29年宿泊旅行統計調査によると、県内に滞在した延べ宿泊者数は1820万人で、前年に比べ2.2%増えた。国土交通省北陸信越運輸局管内の4県(長野、新潟、富山、石川)では計4058万人おり、このうち45%を長野が占めている。

 ただ、宿泊施設の客室稼働率を見ると、長野は37.6%で全国最下位。施設のタイプ別でみると、ビジネスホテルやシティホテルは、70%台の高い稼働率にある一方、旅行客がくつろいで過ごせる旅館は26.8%、リゾートホテルは39.8%にとどまり、旅の感動を伝えられていない実態が見て取れる。

 インバウンドの延べ宿泊者数は、131万9000人に上り、調査を開始した22年以降、最高となった。もっとも、東京都や大阪府の「ゴールデンルート」は1000万人台で、大きく水をあけられている。