産経ニュース

【拓け信州 2018知事選を前に】(中)信州大教育学部・松本康教授(58)

地方 地方

記事詳細

更新

【拓け信州 2018知事選を前に】
(中)信州大教育学部・松本康教授(58)

 ■若者投票へ政治語る環境を

 --選挙権年齢が18歳以上に引き下げられてから行われた参院選と衆院選で、県内の10代投票率は参院選が45・32%、衆院選だと42・87%。これをどう見るか

 「もともと全国的に、20代の低投票率が叫ばれていた。最近では昭和50年代の半分に落ち込んでいて、若者にも社会参画してもらおうと、選挙権年齢が引き下げられた。意外にも10代は20代より投票率が高かった。国を挙げて学校などで啓発をした成果ではないか」

 --それでも依然として、県全体の投票率より低い

 「初めて選挙に行って投票する若者の『初回投票率』が低いと、その年代が年を重ねても投票率は低いままだ。若年層には学校で啓発できるが、年を重ねてからでは手遅れとなる」

 --若者はなぜ、投票に足が向かないのか

 「社会科の授業数が減って、政治や選挙を学ぶ機会が減ってしまった。これが一因に挙げられるのではないか。友達などと政治について語る機会もなくなった。昔は、選挙に行くのが当たり前だった。だが、理由は判然としないが、当たり前が当たり前じゃない時代になった」

 --若者に限らず、投票率は低迷している

 「投票率が落ち込んできたのは1990年代に入ってから。衆院選で小選挙区比例代表並立制が導入された平成8年も大きく落ちた。どの年代でも同様の傾向が見られ、特に20代で顕著に表れている」

 --若い世代は、候補者の政策をみても投票判断ができないのではないか。『いい政策に見えるが、本当に実現できるのかわからない』などの声も聞かれる

 「候補者の政策を見比べる力が大事になる。若いうちは見極められないかもしれないが、子育てなど自分にとって大事な政策をピックアップし、考えの近い人に投票する方法もある」

 --ほとんどの選挙で19歳の投票率が18歳より低いのはなぜか

 「環境的な問題で、大学に進学するなどして県外に移り住む人が多い。長野県でも大学進学に伴って約8割が県外に流出しており、その人たちが投票用紙を取り寄せたり、選挙のたびに実家に帰ったりするケースは少ない」

 --投票率の向上を目指し、信州大学の教育学部が行った啓発活動が、総務相から表彰された

 「28年5月から、長野市選管などと連携して高校などで出前授業をしている。年代が近いと、生徒らも身近に感じるようで、大変好評だ」

 --若い世代の投票率を上げるには、どのような取り組みが必要か

 「政治や政策について、語れる環境をつくることだ。自分の意見は持っているのに、『政治を語ると仲間から浮いてしまう』と考える学生が多い。利害関係のない学校生活の場で、そうした場を設けるべきだ」

 --まもなく知事選だが

 「投票とは、自分の願いを候補者に込めて意思表示をすることだ。4年に1度、県の政治について考える機会だと思えばいいのではないか」 (久保まりな)

                   ◇

 ■若者の投票率 選挙権年齢が18歳以上に引き下げられてから初めての国政選挙となった平成28年参院選で、県内の20代前半の投票率は40.29%。これに対し、10代は45.32%だった。29年衆院選でも10代は42.87%で、20代前半(34.28%)を上回った。しかしいずれも、60・40%を記録した県全体の投票率を下回っている。

 明るい選挙推進協会のデータによると、昭和55年衆院選時の全国の20代投票率は63.13%。平成26年衆院選(32.58%)の2倍近くあった。

 2年衆院選を見ると、20代は57.76%で、30代(75.97%)や40代(81.44%)を大幅に下回っていた。この当時の20代が30代になる12年衆院選でも、30代投票率は56.82%で、40代(68.13%)と50代(71.98%)に比べると低く、「初回投票率」がその後の投票行動に大きな影響を与えている。