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【拓け信州 2018知事選を前に】(上)子供救う体制、早急に構築を

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【拓け信州 2018知事選を前に】
(上)子供救う体制、早急に構築を

 □NPO法人「子ども・人権・エンパワメントCAPながの」矢島宏美代表(54) 

 --「県子供を性被害から守るための条例」が施行され、県でもようやく、法的に子供を守る仕組みが整った

 「子供たちが性暴力の被害を受けている実態は深刻です。条例は本当に必要だった。成立を主導した阿部守一知事の姿勢は評価する」

 --条例制定までに3年間も議論を費やした

 「議論が始まるまで、性暴力についての知識が県民には乏しかった。偏見と差別で誰もそこに踏み込めないでいた。だが、多くの被害が出ていることが分かり、『長野県には性暴力はない』との誤った認識は崩れ去った。この意義は大きい。本当に苦しんでいたのは、被害に遭っている子供たちなんですから」

 --性暴力を受けるきっかけの大半は、子供たちが利用する会員制交流サイト(SNS)だ

 「子供たちがSNSを利用するのは、きちんと話を聞いてくれる大人を求めているのに、身近にいないからです。実際、なぜ利用するのか聞くと、『誰も気に掛けてくれない』『誰も信じてくれない』と答える。SNSで悩みを聞いてもらい、気を許した結果、だまされてしまう」

 --そうした子供たちにどんな対応をとればいいのか

 「早い段階で大人と話す機会を持たせることが大切です。悩み事をずっと心に抱えたままだと、問題行動の形で現れてくる。いじめや万引、売春、リストカットとか。親や学校の先生からすれば、『困った子供』ということになる。だからといって突き放してはいけない。大人がいち早く兆候に気づき、手を差し伸べるべきなんです」

 --今までは表面化することなく、葬り去られていた感がある

 「そうです。身近な人からの性暴力が本当に多く、子供たちは『触らないでほしい』と拒めず、むしろ自分に悪いところがあると思い込んでしまう。そこにつけ込まれ、被害がどんどんエスカレートする」

 --貧困など家庭の事情が事態をさらに悪化させる面がある

 「シングルの家庭で母親の彼氏が同居していたり、兄弟でも父親が違っていたりする。今の時代、家庭の多様化は仕方がない。ただ、虐待のケースを見ると、親が世間から孤立してしまい、自己肯定感が低くなり、そこでたまったストレスを弱い立場の子供に向けるケースが多い。いかに親を孤立させないかが大切となる」

 --県にできることは

 「行政はもとより、学校やCAPのようなNPO法人などが連携して子供たちと向き合う必要があります。この状態を放っておいたら、10年後、20年後の長野県がどうなるか。子供たちを救う体制を一日でも早く構築しなければならない」

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 知事選の告示が19日に迫った。人口減少社会が急速に進む中、県政には多くの課題が横たわっている。行政トップとして、県政運営に携わる知事の責務は大きい。どんな政策課題にどう取り組んでいけばいいのか。有識者に聞いた。 (太田浩信)

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 ■県内の性暴力 県が設置する性暴力被害者のワンストップ支援センター「りんどうハートながの」に寄せられた平成29年度の相談内容によると、新規相談の受付件数は、前年度より2件増の72件。このうち半数を超える37件は、被害時の年齢が18歳未満だった。

 相談内容は、「強制性交など」に分類されるものが24件(このうち被害時年齢が18歳未満は11件)、「強制わいせつ」は23件(同12件)、「性的虐待・性暴力」7件(同7件)、ドメスティックバイオレンス(DV)やセクハラなどの「その他」18件(同7件)だった。

 加害行為は、面識がある人によるものが63件と9割近くを占め、内訳は、「親族・近隣」17件、「学校関係」11件、「職場関係」6件だった。最も多かったのは「他の知人」の29件。「面識なし・不明」も9件あった。