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九州観光、抜け出せ「アジア依存」 欧米客にもターゲットに

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九州観光、抜け出せ「アジア依存」 欧米客にもターゲットに

 福岡市などが欧米からのインバウンド(訪日旅行)誘客を強化する。九州を訪問する海外旅行者は韓国、中国、台湾などアジアからが9割を占めるが、突然の反日運動や政情不安の可能性など「一本足打法」には不確定要素も大きいからだ。アジア以外からの誘客を進め、強靭(きょうじん)な観光産業を目指す。 (中村雅和)

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 福岡市は今月3日、世界最大級のオンライン旅行会社、米エクスペディアグループと協定を結んだ。同社はホテル・航空券などの予約サイトを運営する。利用者は、欧米系が多い。

 エクスペディアのサイトで、福岡市の広告の表示頻度を増やし、PRの特設サイトを開く。さらに市は、宿泊動向などのビッグデータの提供を受け、観光戦略に生かす。同種の提携は京都市、兵庫県に続き国内3例目だという。

 福岡市側の狙いは、欧米からの誘客強化だ。高島宗一郎市長は「欧米などアジア圏以外から、どれだけの観光客を連れてこられるかが大切だ。幅広い地域からの誘客を期待する」と語った。

 ■高いアジア依存

 九州の観光業は、距離が近いアジア圏への依存度が高い。

 平成29年、九州7県の空港や港から入国した外国人のうち、アジア圏からの割合は97・3%だった。全国平均の約85%を大きく上回る。福岡市観光ブランド推進課の白木秀一課長は「特定の国や地域に依存する産業は、大きなリスクと隣り合わせだ」と語った。

 この依存リスクが、韓国で現実化したことがある。

 中国が米軍の「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の韓国配備に反発して、韓国への団体旅行を事実上制限した。この結果、2017年の韓国への中国人観光客は前年の半分程度となり、観光産業は打撃を受けた。

 韓国、中国は「反日ムード」が高まりやすい国だけに、九州の観光産業にとっても、依存リスクは絵空事ではない。アジア圏からの観光客数を維持した上で、別の地域からの観光客を増やすことが、大きな課題となる。

 ■波は来ている

 インバウンドでは長年、東京、大阪、京都の「ゴールデンルート」が定番だった。だが、何度も日本を訪れた観光客には、ルートを外れる傾向が現れる。

 こうした旅慣れた観光客を狙って、福岡市などは「南日本ゴールデンルート」の構築を急ぐ。

 エクスペディア日本法人の九州・中四国地区部長、安保規和氏は「何カ月もかけて九州を一周しようとするような長期滞在者が、キリスト教関連の遺跡を目当てに長崎に赴いたり、大分や熊本などで温泉を楽しむ。その玄関口としてまず福岡に泊まるケースが考えられる」と語った。

 すでに波は来ている。今年1~3月の3カ月をみると、九州7県への欧米やオーストラリアからの入国者が増加した。イギリスからの入国者は、前年同期比で36・4%伸びた。米国やカナダ、オーストラリア、フランスなどもそれぞれ13~30・8%増加した。絶対数こそ少ないが、伸び率はアジア圏を上回った。

 今後、キーワードとなるのが「本物体験」だ。

 福岡市東区の志賀島に最近、欧米人をはじめ、海外の自転車愛好家が集う。

 島内のレンタサイクル店、シカシマサイクルの西村星七店長によると、客の2割前後が外国人だという。

 「海外の旅行客は、旅先でのアクティビティ(遊び)を重視する。都市部から近く自然が豊かな島は、この需要を満たせているのではないか。『ローカルな雰囲気を体験できた』などと好評だ」と語った。

 クチコミサイト「トリップアドバイザー」でも「交通量が少なく、素晴らしい景色だ」(米フロリダ在住)、「観光客向けでなく、本物の素晴らしい地元体験ができる」(米サンフランシスコ在住)など、志賀島への高評価が見られた。

 本物の体験を目指して、福岡商工会議所は博多文化の体験施設「博多伝統芸能館」を活用する。JTBが企画した海外メディア招聘(しょうへい)事業に手を挙げ、フランスの夕刊紙、ルモンドの取材につなげた。