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【企業訪問 製茶編】安間製茶(袋井市) 「白葉茶」研究の末に製品化

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【企業訪問 製茶編】
安間製茶(袋井市) 「白葉茶」研究の末に製品化

 袋井市の名刹(めいさつ)・法多山尊永寺にほど近い小笠沢川沿い。一面の茶畑に囲まれた昔ながらの一軒家が、安間(あんま)製茶の製茶工場兼自宅だ。

 早速水出しの白葉茶をふるまってもらう。急須の中の茶葉は確かに白っぽい。冷水を入れて待つこと5分、若草色の透明な冷茶が目の前に出された。一口飲んでみる。お茶というよりもだしのような、深い味わいにもかかわらず、口当たりはすっきりとしてあとに残らない。爽やかな甘みと濃厚なうまみを兼ね備えたこれまでにない味わいの冷茶だった。

 この白葉茶を作り上げた安間孝介代表(39)は、5年ほど前まで茶業とは無縁の人生を送っていた。東京で働いていた頃、中学の同級生で、後に妻となる良子さん(39)と再会し、実家が祖父の代から続く茶農家だと知った。結婚話が浮上すると良子さんがぽつりと漏らした。「うちのお茶、おいしいのよね。継ぐ人がいないのはもったいないな」

 良子さんは三姉妹の長女。安間代表は「伸び悩んでいる業界はやり方次第で活性化できる。素人だからこそできることもある」と、茶業界に飛び込む決意をした。平成25年のことだった。

 結婚式の翌週、県立農林大学校(磐田市)に入学。そこで白葉茶の存在を知った。深い味わいを持つ希少なお茶なのに、栽培が難しく手を出す農家はほとんどいない。「素人の強みでしょうか。このお茶を製品化して販売できれば、他の茶農家と差別化できると思ったのです」

 さっそく県茶業研究センターの協力を得て白葉茶の研究を始めた。茶葉は日光を遮れば甘みやうまみが出るし、完全に遮光すれば緑化せず白くなることは知られていた。しかし、茶葉の遮光に使われる一般的な資材の遮光率は95~98%。隙間なく完璧にかぶせても茶葉は緑化してしまう。そこで資材を3枚重ねて遮光性を高め、茶葉の白化に成功した。「研究の結果、遮光率99・99%でなければ茶葉は白くならないことが分かりました。99・98%では駄目だったのです」

 遮光のタイミングも重要で、芽から茶葉が2枚開いた『二葉期』でなければならない。少し早いと収穫量が落ち込み、少し遅いと葉は白くならない。手間は3倍かかるのに収穫量は3分の1。当初研究チームには茶農家20軒ほどが加わっていたが、次第に減っていった。そんな中、安間製茶の3代目となった安間代表が奮闘。毎年自家茶園と自家工場で白葉茶の製造実験を行い、今年の新茶シーズンにようやく製品化にこぎ着けた。

 収穫量の少ない白葉茶は、その希少性も手伝い、新茶ができ上がる前から問い合わせが殺到。安間代表のアイデアで、白葉茶の仕上げを自社で行うための設備購入費をクラウドファンディングの手法で募ったところ、2カ月間で目標の60万円を超える75万円余が集まった。

 「静岡のお茶はすべて、これ以上ないくらいの高品質で、ものすごく高いレベルで競争しています。それでも、他の人が目を向けないところに注目してこれまでのやり方を変えれば、お茶はまだまだ売れるし、可能性は広がります。お茶は外国人に人気で2020年には東京五輪もある。今がチャンスだと思っています」

 頼もしい3代目は、素人ならではの目線を生かして茶業界に切り込んでいく。(田中万紀)

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【イチ押し!】「つきしろ」 

 茶葉が白いだけでなく、うまみ成分のテアニンなどアミノ酸が一般的な煎茶の3倍も含まれている。今シーズンから本格的に商品化した。

 テアニンは長時間日光に当たるとカテキンに変性する。カテキンは体にいいことで知られるが、お茶特有の渋みや苦みを持つ成分でもある。その点、テアニン残存率が高い白葉茶は渋みや苦みが少なく、うまみと甘みが凝縮された味わいになる。

 茶葉10グラムに100ミリリットルの水を入れて5分間置いて水出しするのが白葉茶の味わいを最も引き出す入れ方。2煎目、3煎目と少しずつ水の温度を上げれば異なる風味を楽しむことができる。

 8月以降にインターネット通販の受け付けを開始。予定価格は10グラム入り3パックで3780円。