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【書と歩んで 21世紀国際書展特別大賞の4人】(3)中国大使館文化部賞・森勝鷹さん(74)

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 ■文武両道、培った精神力

 「受賞は思ってもみなかった。諸先輩、仲間たちが支えてくれたおかげです」と喜びを語る森勝鷹さん(74)。

 中国・明時代の漢詩「文章烟月(ぶんしょうえんげつ)」〈徐●(=示へんに貞)卿(じょていけい)〉の56字を二八(60×242センチ)の和紙に行書でしたためた。3月から約2カ月間にわたり、計100枚近くを書き、最終的に3枚の中から選び出した。

 もっとも苦労した点は文字の「流れ」を作ることだった。同じ行書でもさまざまな字形があり、関連書籍を読み込み、多くの書家の作品を参考にした。自然に美しく見える字形を探し出すことに時間を費やしたという。

 森さんは「朝が一番いい。気持ちが無になっているから」と話す。そのため、書に向き合うのは早朝の時間帯だ。起床後すぐにとりかかれるよう、前日に墨や下敷きなどの準備を整えて就寝。午前5時半に書き始め、朝食時間の午前8時ごろまでには2、3枚を書く。朝食後や午後にも取り組む。1日に書くのは計4、5枚程度だ。

 「濃淡が気に入らなかったり、思い通りにかすれなかったり、失敗を重ねた」という。受賞の栄誉にも「書展などで諸先輩の字を見ると、自分はまだまだ及ばないといつも痛感する」と謙虚に話している。

 森さんの書道人生を決定づけたのは、20代前半での師との出会いだ。高校卒業後、集団就職で故郷の岩手県大船渡市を離れ、川崎市内に住んだ。町工場での仕事を辞したあと、川崎市消防局に入庁したのは昭和40年のことだ。

 当時、消防局には書家の伊藤慶流氏が先輩として在籍しており、弟子入りをすすめられた。以後、平成9年まで約30年間師事した。

 「字は嘘をつかない」「稽古しないやつは字を見ればすぐに分かる」「やったふりをするな」。消防隊の先輩としてだけでなく、書の師としても、伊藤氏の指導は厳しかった。培われた強い精神は、書への集中力という形で生かされた。

 森さんは剣道の有段者でもあり、文武両道だが、「書に向かうときが一番、精神が集中すると感じている」と話している。

 現在、森さんにとっての書は、仕事や趣味、人との出会いなど、日常の多くの出来事を生む、大切なたしなみの一つだ。

 たとえば「賞状書き」の仕事は、市からも依頼を受けており、退職後も市職員らとの交流が続いている。県野球連盟や川崎野球協会で役員として関わる子供たちの野球大会では、大会の看板の揮毫(きごう)なども任されている。

 森さんは「書道がいろいろな人とのつながりを生んでいる。たくさん書物を読んで研究するので、ボケ防止にも効果がありますね」と笑う。

 「書道も剣道も『道』とつくものに終わりはない。年齢的にもまだまだ書ける。書に対する姿勢を崩さず、情熱をもって取り組み続ける」

 森さんの「道」は続く。(外崎晃彦)

                   ◇

【プロフィル】森勝鷹

 もり・しょうよう 昭和19年1月、岩手県大船渡市生まれ。21世紀国際書会常務理事。川崎市消防局に長年勤め、平成27年、瑞宝単光章受章。剣道錬士六段。

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