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【突破力】ムーンムーン(本社・熊本市中央区) プレ金で仕事にめりはり、効率アップ

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【突破力】
ムーンムーン(本社・熊本市中央区) プレ金で仕事にめりはり、効率アップ

 熊本県庁にほど近いビルの8階に、創業から7年目のベンチャー企業の本社がある。木目調の内装にバーカウンター、4人がけのテーブルが4つ並ぶ。バーカウンターの壁に掛かるモニターでは、バスケットボールの試合の映像が流れていた。およそオフィスだとは思えない空間が広がる。

 「ここはホールと呼び、米ニューヨークのスポーツバーをイメージした造りです。普段は社員が休憩や昼食に使うが、社外の人たちを招いた勉強会やイベントにも活用しようと、こんなレイアウトにしたんです」

 快眠グッズの製造・販売を手がけるムーンムーンの竹田浩一社長(36)が案内し、こう語った。

 毎月月末の金曜日、プレミアムフライデー(プレ金)にはホールでイベントを開いている。

 5月25日の「ベンチャー社長と起業を志す学生の交流会」には、学生ら20人が参加した。竹田氏は学生たちを前に「これまではとかく内輪で楽しむだけだったが、今後は、プレ金でしっかりと社会に貢献したい」と強調した。

 起業を志す学生たちにこの先の道標を示し、熊本の未来づくりに寄与したいとの思いを熱く語った。

 プレ金は昨年2月、政府と経団連が提唱して始まった。竹田氏はそれに目を付けた。プレ金の活用にアイデアを練った。

 最高級車のハマーリムジンを借り切り、車内で懇談会を開いた。バーベキューや寄席の観賞会、男子プロバスケットボール、Bリーグの熊本ヴォルターズの試合観戦を兼ねた宴会など、多彩なイベントを企画してきた。

 非日常の空間を楽しみ、刺激を受け、スッキリした気分で次につなげるその姿勢は、社業のあり方にも関係してくる。

 竹田氏は「睡眠や快眠に関連する事業でもあり、日ごろから社員全員が早寝、早起きを心がけている。夜遅くまでの残業はあり得ない。プレ金を徹底して楽しみ、めりはりを付けることで業務の効率化につなげる狙いもある」と語った。

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 竹田氏は熊本県立熊本工業高校から、九州ルーテル学院大に進学した。

 いずれ会社を興したいとの夢を持ち、大学時代に独学で経営について学んだ。

 「たくさんの経営者に直接、会える機会もありそうだ」と高級ラウンジでのアルバイトにも汗を流し、人脈を広げた。

 大学4年在学中に起業した。当初は、インターネットを使い、少年サッカー指導者向けのDVD製作・販売事業を行っていた。

 転機は28歳だった。幼少時から悩まされてきた睡眠障害を改善する「光目覚まし時計」に出会ったのだ。

 それまでは布団に入ると何時間も寝付けず、夜中には何度も起きた。快眠用のグッズに100万円以上をかけたが、改善しなかった。

 起床時に大量の光を放つのを浴びることで目が覚める、というその時計を米国から取り寄せてみた。

 すると睡眠の質が劇的に変わり、すがすがしい朝を迎えられるようになった。

 「自分と同じ悩みを持つ人は多いはず。そんな悩みから解放するお手伝いがしたい。ビジネスチャンスはある」と一念発起し、今の会社を立ち上げた。

 主力の商品は目覚まし時計だ。直ちに、1年半をかけ、初代の「OKIRO(オキロー)」を開発した。その後も改良を重ねた。今は4代目だ。海外でも通用するように、名称は「inti(インティ)4」に変更した。インカ帝国の「太陽神」を示す言葉だ。

 3年前には横向きに寝る人向けの枕「YOKONE(ヨコネ)2」を発売した。近く、オリジナルのマットレスも発売する。

 社員はわずか8人だが、6人が睡眠改善インストラクターの資格を持つ。商品について、利用者への細かいフォローは欠かさない。

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 同社は熊本地震(平成28年)で危機を迎えた。社があったビルが被災し、住まいを失った社員も出た。

 ただ、物流拠点は千葉県に置いており、ビジネスは続けることができた。

 被災地の企業が作る商品を購入し、復旧・復興を後押しする全国からの「応援買い」にも支えられ、売り上げは過去最高になった。

 快眠グッズや寝具類の世界市場は、4兆円規模だといわれる。

 「社員や顧客のため、会社を大きくするのが今の自分に課せられた責務だ。日本に限らず、世界でもシェアを獲得する。将来的には年間売り上げを1千億円、いや1兆円規模にしたい」。竹田氏は夢の実現に向け、これからも着実に歩みを進める。

 (谷田智恒)