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かつてのカリスマ市長・旅田さん、今はカラオケ喫茶でよろず相談 和歌山

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かつてのカリスマ市長・旅田さん、今はカラオケ喫茶でよろず相談 和歌山

 「カリスマ市長」として圧倒的な人気を誇りながら、スキャンダルの末に落選し、さらに収賄容疑で逮捕された元和歌山市長がいる。旅田卓宗(たくそう)さん(73)はその後も拘置中に市議選に出馬し、トップ当選を果たすなど波瀾万丈(はらんばんじょう)の政治家人生を送ってきた。現在は市内でカラオケ喫茶を経営するが、店には豊富な経験を持つ旅田さんを頼りたいという客が集い、悩める人々の「よろず相談所」となっている。(小笠原僚也)

 ■柔和な表情で

 同市の歓楽街、アロチ。雑居ビル内のカラオケ喫茶で旅田さんがカウンターごしに数人の男性客と談笑していた。柔和な表情を浮かべた旅田さんは客の言葉に何度もうなずいた。

 「ただ、人の役に立ちたいだけ」。こう語る旅田さんのもとに訪ねてくる人々の相談はさまざまだ。金銭の悩み、出馬相談…。遠方で店にまで来られないという人には電話での相談も受け付けている。週に1回は店に顔を出す同市の70代の男性は「酸いも甘いもかみ分けてきた旅田さんだからこそ、何でも話してみたくなる」と話した。

 ■波瀾万丈の人生

 旅田さんの政治家人生は、波瀾万丈そのものだった。警察官や県議を経て、昭和61年の市長選に出馬。6選を目指す現職が相手だったが、「草の根選挙」を展開し、前評判を覆して41歳で初当選を果たした。

 市長時代は親しみやすい人柄で人気を集めたが、その一方で写真週刊誌に女性スキャンダルを報じられ、物議をかもしたことも少なくない。平成14年の出直し市長選に落選後、15年には土地取引をめぐる汚職事件に絡んで収賄容疑で逮捕され、拘置中に市議選に出馬し、トップ当選したことで話題を集めたが、22年には収賄と背任罪での実刑判決が確定した。

 ■相談が生きがいに

 25年に刑期を終えて加古川刑務所(兵庫県加古川市)を出所したが、政治への情熱も失い、待っていたのは目的がない空虚な日々だった。まもなく前立腺がんも発覚。手術後には原因不明の右胸の痛みも感じるようになった。

 だが、周囲の人たちと集まって話しているときだけは苦しみも薄らいだ。「孤独や病気で悩んでいる人が気軽に相談できる場所を作れたら」。そんな思いで27年にカラオケ喫茶の営業を始めた。

 千円でソフトドリンク飲み放題、カラオケも歌い放題。悩みを打ち明ける客には旅田さんがとことん話しを聞く。次第に人生相談に乗ることが自分の生きがいになっていった。店の客には高齢者が多く、60代の常連客から「ここに歌いに来ることが何よりの喜びや」と感謝されたことは忘れられないという。

 かつて、剛腕で鳴らした政治家は今、穏やかな笑みをたたえながらコーヒーをいれている。「お客さんと話をしたり、一緒に歌ったりすることで救われているのは、自分なんです」