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いすみ鉄道の「救世主」退任へ 鳥塚社長、今後は全国ローカル線再生を支援

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いすみ鉄道の「救世主」退任へ 鳥塚社長、今後は全国ローカル線再生を支援

 県や沿線自治体が出資する第三セクター「いすみ鉄道」(本社・大多喜町)の鳥塚亮社長(57)が12日の株主総会をもって退任する。英国の大手航空会社から公募で子供の頃から大好きだった鉄道会社の社長に転じて9年。地域との連携やファンを増やす独自の取り組みで廃線寸前のローカル線の知名度を全国区に押し上げた手腕を今後は全国のローカル線の再生に生かすつもりだという。(永田岳彦)

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 「就任当初は『赤字なら要らない』といっていた地域の方もいた。今はいすみ鉄道へのイメージが変わって、地域の自慢となった。私は持続可能なシステムを作っただけ」。退任間近の6月上旬、大多喜町の本社で鳥塚氏はこう語った。

 いすみ鉄道は大原-上総中野間を走る26・8キロの路線。JR東日本の木原線廃止に伴って、同線を第三セクターとして引き継ぐ形で昭和63年に開業した。

 しかし、沿線人口の減少などもあり、毎年1億円以上の赤字を出し、平成17年からは存廃自体が検討されることに。そうした中、21年に2代目の公募社長に応募して就任したのが鳥塚氏だった。

 沿線人口も少なく、沿線の開発や住民の足としてだけで存続させていくのは難しいとみた鳥塚氏は観光に着目。沿線ののどかな風景に合う人気アニメ「ムーミン」のキャラクターをあしらった「ムーミン列車」や地元の農水産物を提供する「レストラン列車」、旧国鉄時代のディーゼル列車などを走らせ、全国の鉄道ファンを取り込んできた。

 ただ、こうした奇抜なアイデアも本人にとっては至極当たり前のことのようで、「先人のやり方を取り入れただけ。子供の頃から商店街の商売とかを見てきて、鉄道では何でやらないんだろうということが多くあった」とけろりと話す。

 免許取得費用を自己負担させる運転士採用制度も導入。それでも「子供の頃からの、運転士になる夢がかなうなら」と手を挙げる中年男性が多く現れ、制度は軌道に乗った。

 経営は鉄道単体では依然として厳しいが、「いすみ鉄道の役割をきちんと評価してもらい、鉄道を廃線にせず、使える存在として次世代に引き渡すことで、一区切りと思った」と、自ら引退を決断した理由を明かす。

 「建設当初から時代が変わったのならそれに合わせて鉄道の使い方を変えればいい。田舎の鉄道をうまく使って、地域を支えて、地域が良くなれば、日本全体にとってもプラスだ」と大好きな鉄道の可能性を強調する。

 昨年には全国のローカル鉄道を活用して地域活性化につなげるため、東京にNPO法人「おいしいローカル線をつくる会」を立ち上げた。今後は同会を舞台に、これまでに得てきた知見やノウハウを全国のローカル線の再生に“横展開”するつもりだ。