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都職員初、著書が土木学会賞受賞 建設局課長・紅林章央氏

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 ■橋の文化性、広く伝える

 都建設局橋梁(きょうりょう)構造専門課長の紅林章央氏(58)の著書『橋を透(とお)して見た風景』(都政新報社刊)が、都職員初の土木学会出版文化賞を受賞した。都内約120の橋を時代ごとに分け、建設の背景と構造などを分かりやすく解説した同書は、細分化された現代の技術を再考察し、橋の文化的側面を分かりやすく伝えたことが評価された。紅林氏は「経済性を重視する風潮のなか、橋が持つ景観づくりについても今一度、注目してほしい」と喜びを語った。

 『橋を-』は江戸時代から震災復興などを経て現在にいたるまでの都内の橋の変遷を俯瞰(ふかん)し、時代背景や建設に携わった人たちの思いを紹介。経済性を優先する現在の考え方、専門分化した技術者の在り方に警鐘を鳴らすとともに、一般の読者に橋の面白さ、文化性、インフラとしての重要性を伝えている。

 紅林氏は、八王子市出身で、名古屋工業大卒業後「ダイナミックな都市計画をしたい」と昭和60年に都庁入庁。初任地の西多摩建築事務所では橋の設計を任された。「都市計画をしたくて入庁したのに、橋の設計とはどうしたものか」と戸惑いを隠せなかったのが本音だったと振り返る。

 最初に携わったのが奥多摩大橋の建設。当時では珍しい斜張橋(橋脚上の塔から斜めに張ったケーブルで橋を支える構造)で、立案から担当。当時はまだなじみのなかったCG(コンピューターグラフィックス)を駆使し設計した。完成後、自分が手がけた作品が、立体的な物として永く残ることに強く魅力を感じた。

 本庁に異動後は、ゆりかもめ開通のため、高架橋の建設計画を担当。埋め立て地で軟弱地盤だったことから橋の構造を基礎から学ぶことができたという。

 紅林氏が所属する建設局では、個人として本を執筆するのは極めてまれだ。紅林氏は、「橋梁工学が細分化されている今、橋を一つのパッケージとして捉えてほしい」「インフラ事業の重要性を改めて認識してもらいたい」という2つの思いから執筆した。

 紅林氏は「諸外国ではインフラ整備事業の重要性が高く、2000年以降に公共事業費が減っているのは、先進国では日本だけ。この20年間で中国、韓国にも技術的に追い抜かれてしまった」と憂える。「公共事業なくして経済成長はない」という技術者の誇りをメッセージとして込めた。

 趣味は日本全国の橋の写真を撮ること。それぞれの橋が架けられた背景に思いをはせるのが醍醐味(だいごみ)だという。

 四六判。288ページ。2300円(税別)。(八倉陽平)

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