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【平成の人気者はこうして生まれた】くまモン(3)SNS話題作り

「ほっぺ紛失騒動」でのくまモン。街頭で捜索への協力を呼びかけた
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 ■米で表彰 ハリウッドキタ━(゜∀゜)━ 世界進出

 ■相次ぐ偽モン「看過できない」

 くまモン誕生祭2019 日程決定キタ━(゜∀゜)━

 くまモンに関する情報が日々、ツイッターなどで飛び交う。くまモンはSNSという現代のメディアを駆使してファンを増やし、全国区の人気者になった。それは、アイデアによる話題作りの勝利とも言えた。

 平成25年10月30日朝、くまモンがツイッターでつぶやいた。

 「ボク、なんか変じゃないかモン?」

 くまモンに、赤いほっぺがなかった。のっぺりした顔で東京・銀座にある熊本県のアンテナショップ前に姿を見せ、ほっぺ捜索へ協力を呼びかけた。警視庁のゆるキャラ「ピーポくん」を訪ね、遺失物届も出した。

 一連の話は、熊本県の食品アピールが狙いだった。

 「おいしいものを食べるとほっぺが落ちる」。昔からの表現にちなみ、トマトやスイカ、馬刺しなど熊本の「赤色」のおいしいものを食べ、ほっぺを落としたというストーリーを創作した。11月に入り、県のホームページでネタばらし動画を発信した。

 ドタバタ劇の仕掛け人は、電通九州のクリエーティブディレクター、和久田昌裕(39)だった。

 5カ月ほど前、熊本県が「首都圏における熊本の赤ブランド推進事業」のコンペを公示していた。同県玉名市出身ということもあり、和久田はコンペ参加のアイデアを練った。

 社内チームのあるデザイナーが「赤いほっぺのないくまモンは、おもしろいんじゃないか」と口にした。「うん、いけるんじゃないか」。和久田は、ほっぺ紛失事件のストーリーを考えた。

 和久田らのアイデアは、コンペを通った。

 「騒動になりすぎないか?」。県庁内には疑問視する声もあったが、和久田は「今の上り調子のくまモンなら許されます。何より、世間も面白がってくれるでしょう」と説得した。

 県庁内で最も面白がったのは、知事の蒲島郁夫(71)だったという。蒲島は動画の記者会見シーンで、ほっぺ紛失を神妙な顔つきで発表するほどだった。

 その後も和久田らは、次々とキャンペーンを打ち出す。くまモンが、ダイエットに失敗し、営業部長から一時的に「降格」される。そんな展開もあった。

 くまモンは常に注目を集めた。

 中でも、ほっぺ紛失キャンペーンは26年11月、優れた広報活動を表彰する米国の「ウォーミー・アワード」で賞を受けた。日本の企業・団体で初の快挙だった。米ハリウッドの授賞式で、くまモンや和久田はレッドカーペットを歩いた。

                 × × ×

 ネット上では「草の根」の動きもあった。

 九州新幹線鹿児島ルートの全線開業(平成23年3月)から数カ月後、ツイッター上にファンクラブ「くまモン会」が誕生した。

 そこでファン同士、くまモンの魅力をつぶやき、出没情報や先のスケジュールについて情報交換した。

 SNSの特徴で、情報は加速度的に増幅され、広まっていく。

 ネットが沸いた原因は、県や企業によるキャンペーンという「空中戦」だけではない。

 くまモンは誕生当初、「くまモン体操」を踊るのが精一杯だった。やがて、AKB48のダンスや、人気音楽ゲーム「太鼓の達人」をこなすようになった。その機敏な動きを、ファンらがユーチューブに投稿し、話題を広げた。

 くまモン自身もほぼ毎日、ツイッターへ書き込みをした。そのつぶやき数は、24年6月から6年間で4万8千件を超えた。81万人のフォロワーがいる。はやりのインスタグラムも始めた。

 こうした「体を張って頑張るゆるキャラ」の姿が、人々の心を打ち、ネットを通じて人気を広げた。

 ネットに国境はない。台湾では「酷MA萌」の名称で親しまれるようになった。

 25年11月には、蒲島が学んだ米ハーバード大の教壇にも立った。

 「蒲島に講演はお願いするが、ハーバードの教壇に人類以外の生物が立ったことはない」。くまモン登壇に難色を示すハーバードの友人に、蒲島は「巨額の金を使わなくても、これまでと違う行政、政治ができる格好の例なんだ。くまモンなしに講演は成立しない」と説得した。

 「なくしたほっぺは見つかったのかい?」

 名門大学の学生から、くまモンに質問が飛んだ。大人気だった。その様子を見て蒲島は「くまモンは、世界を相手に挑戦できる」と確信した。

 世界進出は、くまモンに新たな難題を突きつけた。

                 × × ×

 今年4月末。熊本県庁5階にある県くまモングループの部屋に、段ボール箱が届いた。中国からの航空便だった。

 箱の中には、数点のくまモン商品が入っていた。男性職員が取り出し、一つ一つチェックした。県が発行した許諾番号は記されているか、製造業者の明記はあるか-。

 「また偽物みたいですね」。職員はため息をつく。すべて熊本県の許可を得ていない不正利用品、つまり偽物だった。

 同グループくまモン担当主幹の四方田(よもだ)亨二(44)は、弁護士の千葉康博(38)に連絡を入れた。「現地の弁護士と連携して、警告書など法的措置をお願いします」

 こうした「偽モン」は、くまモン人気が海外に広がるのに合わせて、増加した。

 熊本県は26年6月、くまモン関連商品の海外解禁に踏み切った。原則、県内に本社か製造拠点がある企業が登録すれば、無料で関連商品の製造販売を認めた。

 当然、偽物が危惧された。県は千葉の協力を仰いだ。

 千葉は「アジア法務サポートセンター」代表理事を務め、中小企業の海外進出を法律面でサポートしてきた。海外での知的財産の法律に詳しく、米ニューヨーク州弁護士資格も持つ。

 さらに、アジア各地の法律事務所と提携している。このネットワークを駆使して、偽物パトロールを始めた。パトロールの重点は「偽物大国」である中国だ。

 「(ネット通販大手の)アリババなどサイトをパトロールして、偽物を探してほしい。現物判断が必要な場合は、商品をこちらへ送ってくれ。くまモンは、熊本県民共通の財産であり、無許諾は看過できない」

 千葉は上海の提携先に連絡した。

 以来、偽モン容疑がもたれた商品が、毎月1回のペースで県庁に届く。

 27年3月、中国の通販ネットにある偽物商品が出回った。

 情報を仕入れた千葉の動きは早かった。

 業者は浙江省にあるとみられた。千葉は上海の法律事務所に調査を依頼した。

 現地の担当者は同4月、現地に趣き、工場と会社の所在を確認した。直後、知財保護を担当する市場監督管理局に通報した。同管理局は立ち入り調査をし、違法商品や違法所得を没収、業者に罰金を科した。

 ただ、偽物が皆無になることはない。

 熊本県は30年1月、海外企業に対して、小売り価格の数%の利用料を条件に、くまモン使用を認めた。

 くまモンは「無料使用」で、商機を拡大してきた。海外限定とはいえ、この大方針を転換したのだった。

 徴収した使用料は、偽物対策に充てる。

 「有償化により、実際の損害が発生する。損害賠償が請求できるようになり、知財侵害への抑止力が増す」。千葉は期待をかける。(敬称略)

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