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どっちつかずのエネルギー基本計画素案 原発立地自治体から不満 

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 ■「国は覚悟示すべき」

 経済産業省が公表した第5次エネルギー基本計画素案に、エネルギー業界から、批判の声が出ている。平成42(2030)年度の電源構成に占める原発の比率を20~22%とした半面、原発の新増設や核燃料の処理などには踏み込まず、どっちつかずになっているからだ。(中村雅和)

 「現状では、2030年度でも、リプレース(建て替え)や新増設がなければ、ちょっと危ないと感じている」

 九州電力の瓜生道明社長は4月27日、記者会見でこう述べた。「危ない」と指摘するのは、わが国の将来におけるエネルギー供給態勢だ。

 国内には現在、原発が計40基(総出力3913万キロワット)ある。

 エネルギー基本計画の素案は、原発を「重要なベースロード電源」「実用段階にある脱炭素化の選択肢」と位置付けた。昼夜を問わず安定して発電できる原発の能力や、地球温暖化対策への、国際的な意識の高まりを考慮した。

 素案は2030年度における発電量ベースの電源構成比率で、原発を20~22%とする。

 この数字の実現は、極めて厳しい。

 改正原子炉等規制法によって、原発の運転期間は40年と定められた。一定の条件を満たした場合だけ、60年まで期間を延長できる。

 2030年度までに全国40基中16基が運転開始から40年が経過し、廃炉対象となる。九州電力でも、川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)など5基中3基が40年を迎える。

 原発は2040年度以降、さらに減少する。現在認められる運転期間では、北海道電力の泊原発3号機など5基(出力計542万キロワット)しか残らない。九州は原発ゼロとなる。

 到底、「重要なベースロード電源」としての発電量は期待できない。

 この事態は、多くの原発が運転期間を60年に延長すれば、若干は改善される。しかし延長には、安全対策への巨額投資が必要となる。

 原子力規制委員会は平成27年4月、関西電力高浜原発1、2号機の運転延長を認めた。関電は延長のためだけに、計約2千億円を投じる計画を立てた。

 この追加負担に電力会社が耐えられなければ、延長はあり得ない。

 四国電力は今年3月、伊方原発2号機の廃炉を決めた。同社の佐伯勇人社長は「運転期間などを考え、投資の回収はリスクを伴う」と理由を説明した。

 そもそも素案が掲げる原発比率20~22%を達成するには、運転延長よりも、原発を新増設する方が経済的であり、何より新技術によって安全性が高まる。

 新増設には、巨額の投資と数十年の長い時間が必要だ。資源エネルギー庁の試算では、玄海原発3号機(出力118万キロワット)と同程度の原発建設費は、約5千億円となっている。九電の年平均の設備投資約2570億円の、2倍近い金額に達する。

 これまで電力会社は、国の原子力政策に沿って、エネルギーの長期的な見通しも踏まえ、こうした巨額投資をしてきた。瓜生氏は「原子力に限らず、電源なりネットワークに投資するには、環境が整っていないと不可能だ」と語る。

 しかし、電力会社の経営環境は、不透明感を増す。平成32年には、投資を電気料金で回収できた総括原価方式が廃止される。さらに発送電分離によって、電力会社は弱体化する。先行きが不透明であれば、巨額投資には踏み切れない。

 何より、「原発を新増設する」という明確なエネルギー戦略と政府のリーダーシップがなければ、民間企業である電力事業者は、巨大リスクを背負えない。

 九電社長に6月就任する池辺和弘取締役常務執行役員は「国がどうやっていくのか、明確になってから、事業者としての対応がある」と話した。

 ■核燃料処理問題も

 素案をみると、使用済み核燃料の処理についても、物足りなさが残った。核燃料サイクル政策について「着実に実行する」との表現を踏襲しただけだった。

 現在、使用済み核燃料は、各発電所内で一定期間保管後、再処理施設などがある青森県六ケ所村に運ばれる。

 だが、六ケ所村の再処理施設は、度重なるトラブルで、本格稼働には至っていない。施設の受け入れ余力は、ほぼゼロに近い。

 すでに使用済み核燃料がある以上、再処理は原発への賛成・反対を問わず、対処しなければならない問題といえる。

 ■「振り回される」

 東京電力福島第1原発事故以後、原発には根強い反対がある。政治家や官僚にとって、原発推進の旗を振るのはデメリットが大きい。こうした点を背景に、今回の素案も、問題を先送りしたといえる。

 だが、エネルギーは国民生活の基盤であり、国家として長期視野に立った政策が欠かせない。

 現状に、原発立地自治体から不満の声が上がる。

 全国原子力発電所所在市町村協議会の渕上隆信会長=福井県敦賀市長=は今月14日、「将来を見据えた原発のあり方が不透明なままで、立地自治体は振り回されている」と批判した。

 玄海原発がある佐賀県玄海町の岸本英雄町長は「時間切れが迫っている。(原発の新増設は)ここ2~3年で動き出さなければ、間に合わない。国は覚悟を示すべきだ」と警鐘を鳴らした。

 九電のある幹部は「エネルギー小国・日本にとって、原発という選択肢をなくしてはいけない。数十年後の子孫を思い、冷静に議論すべきだ」と語った。

 エネルギー基本計画は素案を基に、7月にも閣議決定される。

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