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【翼の未来 成田空港40年】(上)アジアのハブ競争熾烈 羽田と連携、役割分担で対抗

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【翼の未来 成田空港40年】
(上)アジアのハブ競争熾烈 羽田と連携、役割分担で対抗

 格安航空会社(LCC)専用の成田空港第3ターミナル。真新しいこの建物がLCCの発着がピークとなる早朝や夕方になると利用者でごった返すのはもはや日常の風景だ。成田国際空港会社(NAA)は建物の改修や敷地の拡張などで利便性の向上を目指し、成長著しいLCC利用客の需要を取り込もうとする取り組みが足元でも続く。

 ■発着枠やがて限界

 3月に国、NAA、県、地元自治体の4者による協議会が機能強化策で合意した背景にも、LCCに代表されるアジアの航空需要の高まりがある。NAAの宮本秀晴執行役員経営計画部長は「早朝や深夜の発着を行うLCCの高頻度運航の影響はあった」と明かす。

 国も「観光立国」を目指し、訪日客を平成32年までに4千万人、42年には6千万人にする目標を掲げる。2020(平成32)年開催の東京五輪・パラリンピックを控え、日本の空の表玄関である成田、羽田両空港の発着枠拡大や運用の変更による機能強化は避けて通れなくなってきた。

 だが、国内各地の路線を持ち、発着枠に余裕のない羽田に対し、年間30万回の発着枠に現状は約25万回の成田は余裕があるとはいえ、「現状のままではやがて限界が来てしまう」(宮本氏)という危機感は関係者の間に根強い。空港の地位低下は地元への恩恵にも跳ね返りかねない。第3滑走路の新設、第2滑走路の延伸、開港以来の合意事項であった午後11時~午前6時の夜間早朝飛行制限の緩和の合意は、地元の理解を得るという大前提はあるものの、今や必然の流れだったといえる。

 一方で、平成22年10月の第4滑走路供用開始に伴って羽田に32年ぶりに国際定期便が復活して以降、成田が強みとしている北米路線も含め、羽田の就航は世界各地で増えている。成田開港時の「羽田は国内線、成田は国際線」という明確な航空政策に比べ、現状は両空港の立ち位置が曖昧になっている。そのころから、羽田と成田を一体的にとらえる「首都圏空港」という考えも広まってきた。

 国土交通省首都圏空港課の担当者は現状の羽田と成田の役割について、「羽田は日本発着の直行需要に、成田は国際線相互間の乗り継ぎ、LCCや貨物便に対応する」と話す。

 役割分担しつつ、一体運用で近隣のアジア諸国の主要空港との競争に打ち勝ち、欧米の主要都市の空港に追いつくことを目指す基本戦略だ。

 ただ、成田では昨年度、空港の利用旅客数が初めて4千万人の大台を突破したのに対し、機能強化で先行する仁川(韓国)、チャンギ(シンガポール)、上海浦東、北京第2(中国)などのアジアの主要空港では利用旅客数が既に5千万~6千万人台に到達。東京に近いアクセスを生かした羽田発着の国際線も増加傾向が続く。

 ■「単独では厳しい」

 成田はこれまで構築した北米路線のネットワークを維持しつつ、LCC需要を取り込み、まだアジア主要空港に比べ少ないとされるアジア各地の路線開拓も進め、空港間競争の勝ち残りを図っていくしかない。

 立教大特任教授でJTB総合研究所社長の野沢肇氏は「羽田にしても成田にしても、単独でアジアの他のハブ空港に対抗していくのは厳しくなっている状況」と分析。その上で、「航空会社には発着時間制限や利用料負担なども空港選択の大きな要素になる。利用者には、空港へのアクセスや乗り継ぎの簡便性、出入国手続きなどの使いやすさが重要」と提言する。

 国内外で激しさを増す空港間競争。連携と役割分担を進める首都圏空港の枠組みで成田はスタートラインに立ったものの、課題はなお山積しており、競争の勝ち残りに向けた関係者の手腕が問われている。(永田岳彦)

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 成田空港は20日、開港から40年を迎える。国内外のライバル空港や航空会社の勢力図がめまぐるしく変化する中、目指すべき将来像や課題を探った。