産経ニュース

崇城大院生らのバイオベンチャー始動 焼酎粕で「光合成細菌」培養

地方 地方

記事詳細

更新


崇城大院生らのバイオベンチャー始動 焼酎粕で「光合成細菌」培養

 崇城大(熊本市西区)の大学院生らが、焼酎の生産過程で出る「焼酎粕(かす)」を使って光合成細菌を安価に培養する技術を開発し、培養キットを製造販売するベンチャー企業を設立した。光から化学エネルギーを生み出す光合成細菌は、農業や水産業への応用が期待される。メンバーは「熊本の第1次産業活性化に貢献したい」と意欲を燃やす。(谷田智恒)

                   ◇

 光合成細菌は、光を浴びることで、生存に必要なエネルギーを自ら生産する細菌の総称。光合成の副産物としての酸素は、出さない種類もある。光合成の複雑な過程の中で、多くの有機物や硫黄化合物を分解・合成する。このメカニズムを、産業へ応用しようという考えは以前からあり、研究が進む。

 具体的には作物の栽培促進や、水環境の浄化などが期待される。すでに光合成細菌は市販されているが、価格の高止まりが普及の課題となっている。

 研究グループのリーダーで、大学院工学研究科の古賀碧(あおい)氏(24)は、球磨焼酎に着目した。

 古賀氏は球磨焼酎の本場、熊本県あさぎり町出身だ。生物生命学部の4年生だった平成28年には、球磨焼酎と県産フルーツを使ったリキュールを開発した。古賀氏は同大の起業部にも所属する。

 リキュール開発の中で、焼酎メーカーから、焼酎粕の処理に困っていると聞いた。

 球磨・人吉地方では年間2万6千トンもの焼酎粕が出る。肥料や家畜飼料に再利用されるのはごく一部で、年間数億円の処理費用をかける蔵元もある。

 古賀氏は、焼酎粕の有効活用策を探るうちに、光合成細菌と出合う。同大生物生命学部の宮坂均教授のアドバイスも受け、起業部の後輩と、焼酎粕を使った光合成細菌の培養研究に取り組んだ。

 その結果、焼酎粕を使って光合成細菌を安価に育てる培養液の開発に成功した。現在、この培養キットを使った実証実験が、九州15カ所で進んでいる。すでに約40軒の農家が利用し、大手企業からの引き合いもあるという。

 この培養キットを販売するビジネスプランは、各地で開かれたビジネスプランコンテストで高い評価を受けた。

 4月末、資材の培養キットを製造・販売するベンチャー企業「Ciamo(しあも)」を設立した。崇城大が昨年設立した学内投資会社「SOJOスタートアップラボ」が、1200万円を出資した。社名「しあも」は「幸せをもっと世界中に広げていく」との願いを込めた。古賀氏が社長に、大学院工学研究科で応用微生物工学を専攻する後藤みどり氏(22)が専務に就任した。

 培養キットは初回のみ4900円するが、2回目以降は3900円の培養液を購入するだけで済む。同様の市販品の半額程度という。

 同社は全国に販路を広げ、5年後の売上高10億円を目指す。農業だけでなく、海外のエビ養殖業者などへの販売にも取り組む。

 古賀氏は「製品を広く普及させれば、焼酎粕も減らすことができ、焼酎蔵元の役にも立つ。しあもの活動を通じて、熊本の農業や水産、畜産業に貢献したい」と抱負を語った。

 崇城大の中山峰男学長は「この事業が成功すれば、後輩も起業にチャレンジするようになるだろう。大学、先生方と総力を挙げ支援したい」と述べた。

                   ◇

 崇城大は6月10日午後1時~5時、熊本県人吉市の人吉カルチャーパレスで、光合成細菌に関するシンポジウムを開く。入場無料。世界初クロマグロの完全養殖に成功した近畿大水産研究所の熊井英水名誉教授の講演のほか、「しあも」の学生らと農家の座談会もある。