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【埼玉経済ウオッチ】「酒どころ」浸透へ懸命 清酒出荷量・全国5位

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【埼玉経済ウオッチ】
「酒どころ」浸透へ懸命 清酒出荷量・全国5位

 埼玉県の経済・産業活動のポテンシャルはこれまで述べてきた通りだが、数値実績における裏付けは「全国第5位」が多いことだ。代表的なものは人口、県内総生産だが、民営事業所数、従業者数(卸売・小売業)など数多く、意外なところでは「清酒出荷量(課税移出数量ベース)」がある。

 ◆米も水も良質

 日本酒造組合中央会によると、平成26年度の埼玉県の清酒出荷量は2万1255キロリットルで全国5位。その後、巻き返しを図り、5月中旬発表予定の29年度分では、兵庫、京都、新潟に次ぐ全国4位への返り咲きを狙っている。

 酒造りに欠かせないのが「米」と「水」だが、一般財団法人「日本穀物検定協会」が実施する「平成29年産米の食味ランキング」で、埼玉県育成品種「彩のきずな」が最高ランクである「特A」評価を県産米で26年ぶりに獲得。また環境省選定「平成の名水百選」には武甲山伏流水(秩父市)など県内4カ所が選ばれるなど、「酒どころ」として欠かせない環境が整っており、現在県内35の蔵元で良質な酒が造られている。

 一方、17年に開校した「彩の国酒造り学校」は県内酒造会社に勤務する若手技術者を対象に、醸造技術に関する講義や実技指導などを2年間かけて実施。受講者は2級酒造技能士の資格取得を目標とし、28年2月に資格試験を受験した第5期生は全員合格という快挙を達成した。「酒造会社も後継者難の波が押し寄せてきている。そのためにも『社員杜氏(とうじ)』の育成は不可欠であり、続けられてきた技術養成の実績が出荷量上位をキープしている一因」と埼玉県酒造組合事務局長の下坂和美氏は胸を張る。

 今春には、酒文化研究所(東京都)などの実行委員会が主催する「ワイングラスでおいしい日本酒アワード2018」において、小山本家酒造(さいたま市西区)の「界(かい)」がメイン部門で県勢初の最高金賞を受賞した。「醸造技術が飛躍的に進歩し、近代清酒の新世界といえる明治時代に愛された酒は『17度』の旨(うま)さというヒントを得て、何度も試作・検討を繰り返し、今までのパック酒とは一線を画す味わいにたどり着くことができた」(同社開発担当)

 ◆増える蔵元ツアー

 清酒出荷量ベースでは近年、千葉県が追い上げてきており、「(関東の雄を維持するために)県民にもっと埼玉の地酒を知ってもらいたい。そのためには官民一体となったPR活動が必須」(下坂氏)。

 近時、日本酒関連のイベントや蔵元見学ツアーなどは増加しつつあり、引き続き「酒どころ埼玉」の浸透度アップに期待したい。(土持功・東京商工リサーチ埼玉支店長)

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【プロフィル】つちもち・いさお

 昭和47年、宮崎県生まれ。立正大学卒。平成10年東京商工リサーチ入社。東京支社調査部を経て、27年6月より現職。趣味はサッカー(最近は観戦が主)、ランニング。