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【想う 8年目の被災地】5月 複合体験施設「モリウミアス」を運営・安田健司さん(30)

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 ■「雄勝に息づく伝統や文化を守りたい」 子供に豊かな農林漁業体験

 東日本大震災の津波で大きな被害を受けた宮城県石巻市雄勝町。豊かな森、海を抱くこの町で、震災前から廃校になっていた旧桑浜小学校を改修、複合体験施設「モリウミアス」を運営する。

 「震災発生時は大学生で就職活動中でしたが、東北の状況を知りボランティアに参加しました。石巻市街地の家屋にたまった泥をかきだしたり、炊き出しなどを行い、雄勝に毎日食事を届けました。カーナビに表示され、そこにあるはずのコンビニが鉄骨だけを残して跡形もなく消えてしまっている。小学校の校舎の上に船が打ち上げられている。あまりの光景に言葉を失いました」

 大学卒業を待たず、平成24年8月、同町に移住した。地域住民の持つ温かな空気にひかれた。公益社団法人「MORIUMIUS(モリウミアス)」に所属、子供たちの教育支援活動に取り組んだ。

 「仮設住宅の集会所で子供たちに勉強を教える『放課後塾』を運営しました」

 平成27年に活動拠点の旧桑浜小学校の改修が完了。複合体験施設「モリウミアス」としてスタートした。国内外の子供たちを受け入れ、農林漁業体験、雄勝の住民との交流をしながら地域の暮らしを体験できる。

 「教育支援活動だけでは町の復興を後押しするのに限界がある。豊かな環境での体験を通した教育で町に人を呼び込みたかった」

 被災地に人を呼び、活気を取り戻す。多くの被災地の課題だ。

 「都会ではできない経験で町を豊かにしたい。雄勝に行けば豊かな環境の中でさまざまな体験をし、育つことができる。それがこの町のブランドとして人を呼び込むことにつながればと思っています」

 「そして雄勝が第二の故郷と思えるきっかけになればよいと思っています。子供たちが地域の暮らしを体験しながら育つのは保護者にとっても魅力的に見えるはずです。そうした人が雄勝に移り住んでくれればと思っています。この町での体験を通して、将来町に戻ってくる子供もいればと考えています」

 震災発生から8年目。震災前、約4300人いた人々。今は約1500人。町を見渡せば高齢化の波を感じずにはいられない。町の小中学校の全校生徒はそれぞれ21人、14人。地域の子供たちは決して多くはない。

 「将来、小中学校がなくなれば、町から人が消えてしまう。この土地に息づいてきた伝統や文化を守りたい。町の外から来た子供たちとも一緒にそれらを後世に残していきたい」

 ただ、町の未来を描くことは、そう簡単ではない。自らが住む場所を、「浜」と呼ぶ。未来を描くには、次世代の子を町に迎え、人を循環させることが必要だ。

 「浜を守りたい」

 その一念が、行動になる。(塔野岡剛)

                   ◇

【プロフィル】安田健司

 やすだ・けんじ 千葉県出身の30歳。東京都内の大学在学中から、インターンシップを通じて被災者支援に取り組んできた。

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