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【士魂を育む 今村裕の一筆両断】「縦書き」を道徳観のきっかけに

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 ゴールデンウイークも終わり、それを境に学校も落ち着いて日常に戻ってくることでしょう。

 小学校では今年度新設された「特別の教科 道徳」が始まりました。中学校でも来年度からのスタートとなります。この話題は他でもいろいろ議論されていますので、ここでは、やや違う視点から考えてみましょう。

 「特別の教科 道徳」の新設に至る歴史的な経緯の詳細については、ここではふれませんが、いじめ(自殺)の問題がそのきっかけになっていることは、疑いようがありません。いじめや不登校などが教育問題だけでなく、社会問題となった経過を経て、平成7(1995)年、スクールカウンセラー(SC)が中学校に導入されました。今では、非常勤ながら全中学校に配置されています。あわせてスクールソーシャルワーカーの配置も進んでいます。

 SC導入の後を追うように、道徳の時間のそれまでの副読本に替わり、「心のノート」が平成14年に配布されました。つまり、SCの導入と「心のノート」の配布は、同じ方向性の中にあったといえます。心理援助職が学校に入り、子供たちの心の問題に深く関わろうとする方向に「心のノート」が位置していたのでしょう。SCの主な資格要件である「臨床心理士」の学問的背景が臨床心理学であるように、「心のノート」も同様に臨床心理学です。臨床心理学は欧米にその起源をもちます。よって、「心のノート」は「横書き」でした。

 26年には、それまでの「心のノート」にかわり副読本「私たちの道徳」が配布されました。この「私たちの道徳」は「縦書き」です。この横書きから縦書きへの変化は昨年の小学校、本年の中学校の教科書検定にも引き継がれ、すべて縦書きが基本となっています。日本では産経新聞をはじめ、全ての新聞が原則縦書きです。世界的に見ても、新聞が縦書きであるのは我が国日本だけでしょう。漢字文化をもつ中国でさえも新聞は横書きです。大仰になることを怖れずにいえば、「横書きから縦書きへの変化」は「欧米起源の文化から、日本文化への転換」と考えることができるかもしれません。

 筆者は現在、大分大学教職大学院の教員をしています。大学院生は、つい先日まで学校で学級担任や指導教諭として、最前線で子供たちと関わっていた学校の現職教員が含まれています。そうした大学院生とのやり取りは、非常に生々しく、刺激し合うことができる時間になっています。

 昨年、その大学院生に、学習指導要領の項目表現に縛られないように、と念を押した上で「子供に身につけてほしい道徳性」を尋ねました。

 結果は、『思いやり』『協力』『友情』『信頼』『親切』『公平』などの内容が圧倒的に上位を占めました。

 その後、「いじめ」に関する事例をもとに、その対応について深く意見交換、議論をしました。そして、先ほどと同じ質問をしたのです。すると内容に変化が現れました。『勇気』『正義(感)』『実行力』『行動力』『卑怯にならない』など、それまでは少数であったものがぐんと増えたのです。いじめという不条理に対していくには、こうした道徳性が必要と、考えたのです。

 学校では「知、徳(情、意)、体」という言葉で教育が長年語られてきています(知=ヘッド、情=ハート、意=マインド、体=ボディ)。昨年亡くなられた渡部昇一先生はそれに加えて、「『肚(はら)』を育てよう」と、提言されています。そして「肚」には「ガッツ」という単語をあてられました。つまりこれは「勇気」「正義(感)」「覚悟」「行動力」のことでしょう。

 「縦書き」の道徳教科書で学んだからといって、それで即「ガッツ」が育つといいたいのではありません。しかし、「縦書き」が日本文化の特徴であることを改めて考え、今子供たちに必要な道徳観を深く考えるきっかけにできるかもしれません。

 横書きから縦書きへの変化を、「肚を育てる」という視点でも考えてほしいのです。

                   ◇

【プロフィル】今村裕

 いまむら・ゆたか 昭和31年、福岡市生まれ。福岡県立城南高校、福岡大学卒。兵庫教育大学大学院修士課程を修了。福岡大学大学院博士後期課程。公立小学校教諭、福岡市教育センター、同市子ども総合相談センター、広島国際大学大学院心理科学研究科などを経て、現在は大分大学大学院教育学研究科(教職大学院)教授。臨床心理士。

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