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若山牧水賞、迢空賞ダブル受賞 山梨県歌人協会会長、三枝浩樹さん(71)

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 ■生死に正面から向き合い詠む

 甲斐市在住の県歌人協会会長、三枝浩樹さん(71)の歌集「時祷(じとう)集」(角川書店)が、「第22回若山牧水賞」(宮崎県など主催)と、「第52回迢空(ちょうくう)賞」(角川文化振興財団主催)でダブル受賞した。16年ぶり、6作目の新作約600首に込めた山梨の自然、人生への思いを聞いた。(松田宗弘)

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 --ダブル受賞の感想は

 長く賞と無縁だった。思わぬ評価をいただき大変うれしい。作品タイトルは若い頃から好きなドイツの詩人、リルケの「時祷詩集」にちなんだ。作品は生活で感じたこと、思いを表現した。南アルプスや八ケ岳なども詠み込んだ。文学にたとえると、時祷集は「純文学」。生きること、死ぬことに正面から向き合っている。そこが評価されたのかもしれない。

 --16年ぶりの新作となったが

 9年前まで教員で、退職後も短歌結社誌「沃野(よくや)」代表を務め、歌集を編むゆとりがなかった。

 --短歌との出合いは

 中3のとき。歌人だった父をまねて始めた。歌のベースは自然も含め、日常の中で感じる思い。生活の中で心に感じたこと、とどまったことを31音で表す。私は「普段着の短歌」という言い方をしている。短歌は主題である「生きること」と一体で、切り離せない。

 --いくつか作品紹介を

 「きみの中の花瓶は~」は、深く傷つき不登校になり、私のところへ来たある男子生徒のことを詠んだ。40年の英語教員生活のうち最後の3年間は、不登校の生徒の話を聞いたり、勉強を教えたりしていた。

 歌の趣旨は、この生徒や私たちの心の中に花瓶があり、それが壊れても、修復できると信じてみよう。「なずなすずしろ」は春の七草の一つで、「一緒に摘もうか」と呼びかけた。心の花瓶を修復したらそこに花をさそうよと。自分や傷ついている人へのメッセージの歌でもある。

 --郷土への思いを描いた作品は

 「うつしよに母の~」は母への挽歌。うつしよは現世のこと。母は生前、南アルプスの「農鳥(のうとり)岳」(甲斐が嶺)を正面に見ながら、家の前の道をよく散歩した。雪が降り、農鳥岳が白くなった情景から、母への思いを詠んだ。母の死から、農鳥岳は自分にとって特別な思いの山になった。

 --短歌はどうやって作るのか

 ひとつのひらめきや実感をきっかけに、思いが目覚め、それを形にする。短歌は五・七・五・七・七という31の音とリズムで構成する。31音しかないので、たいそうなことは言えない。だから、全体を暗示する1点をおさえる。これが短歌の詩形の魅力。未発表作品がたくさんあり、次回作は来年早々にも出せればと思う。

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【プロフィル】三枝浩樹

 さいぐさ・ひろき 昭和21年10月17日、甲府市中央(旧桜町)生まれ。44年、法政大文学部を卒業後、東海大甲府高校で英語教諭を務めた。平成21年4月から短歌結社誌「沃野」代表。家族は妻、2男1女。兄で歌人の昂之さんは県立文学館館長。

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 ■若山牧水賞と迢空賞 「若山牧水賞」は平成8年、宮崎県日向市出身の歌人・若山牧水の業績を永く顕彰するため、宮崎県、日向市などが創設。短歌で功績をあげた人に贈られる。「迢空賞」は昭和42年に角川書店が創設。短歌界での最高の業績をたたえる賞で、第10回から角川文化振興財団が主催している。

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