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【突破力】長州産業(山陽小野田市)どんなものづくりでもやる

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 「近代社会を築いた長州人の先輩諸氏の心意気を多少なりと引継ぎ不退転の決意を以(もっ)て邁進(まいしん)する所存でございます」

 本社の応接室には、岡本晋(すすむ)社長(47)の父で、昨年6月に亡くなった創業者、要元会長=享年(80)=のあいさつ文が掲げられている。社名の由来を示し、創業に当たっての決意を宣言している。

 昭和55年10月、要氏は住宅設備メーカー、長府製作所の取締役を退職し、会社を興した。第2次石油危機の翌年だった。化石燃料に頼らず、風呂好きな日本人が、ふんだんにお湯を使える豊かな生活を支える-。太陽光で湯を沸かす太陽熱温水器の製造販売を、主な事業としてスタートした。

 「将来の多角化を見据え、どんなものづくりにも取り組んでやろうとの野心も込めて、父は社名に『産業』を冠したんです」

 要氏の後を継いだ長男の晋氏は、こう力を込めた。

 言葉通り、59年に半導体製造装置のメンテナンス事業に参入した。宇部市に日本電気(NEC)の工場が進出しており、関連業務の受注を目指した。

 全くの異分野で、ノウハウはない。当時、社員は70人足らずだったが、うち6人を半導体メーカーに1年間出向させ、技術を学ばせた。

 翌60年、NECの協力工場に指定された。給湯器などの住宅機器と並び、半導体は、大きな柱になった。

 両分野で培った技術を生かし、平成11年に太陽光発電事業に進出した。国内で一貫して製造・販売する態勢を築いた。要氏が目指した「産業」の名に、恥じない会社に成長したといえる。

                 × × ×

 現社長の晋氏は、早稲田大大学院理工学研究科を卒業し、平成8年に旧通産省にキャリア官僚として入った。

 「橋本龍太郎氏が通産相時代にまとめた日米自動車交渉が印象深く、通産省を選んだ。ゆくゆくは局長、あわよくば事務次官。途中で辞めようなんて、つゆほども思っていませんでした」

 産業界との折衝を重ねる現場から国会対策まで、経歴を重ねたが、平成24年に転機が訪れた。

 母の入院に加え、父が体調を崩し、生死の境をさまよい、大手術を受けた。地元で両親を支え続けた姉も限界だった。

 Uターンを決意した。「父が命をかけた会社。やるしかない」。同年7月に入社した。

 それでも葛藤はあった。

 「生活の全てが霞が関でした。その仕事がいやになったわけでもない。体の一部が引きちぎられたような感覚が、数年間は続きました」

 幸い、要氏の病状は回復し、社長に復帰した。父の元で、会社経営を一から学び始めた。

 常に謙虚であれ

 長幼の序を大切に

 おごりは自滅する

 アドバイスはこれだけだった。父の背中を必死に追いかけるうち、官庁のような大組織にはない責任の重さを感じるようになった。

 言い換えれば、逃げ場がなかった。いつの間にか、そこに面白さを見いだすようになっていた。

                 × × ×

 平成28年1月、要氏は会長に退き、晋氏が社長に就任した。新たな挑戦の分野に、新エネルギーを据えた。

 太陽光発電に蓄電池を組み合わせ、さらに遠隔監視し最適化するシステムを、パッケージとして販売する。狙いは来年だ。

 住宅用太陽光発電の余剰電力買い取り制度が来年、開始から10年を迎える。これまで余った電気を電力会社に売っていたが、売電価格が下がる。自宅で使う電気代を節約する方が、家計にとって安上がりになる。

 家庭に蓄電池を導入すれば、昼間つくった電気を、夜間にも使える。

 同制度の対象となる家庭は、50万戸ともいわれる。晋氏は「私たちのシステムは、後付けで蓄電池を入れることもできる。50万戸のうち1~2割の導入でも、市場として大きい」と語った。

 その先も見据える。

 平成23年の東京電力福島第1原発事故を受け、当時の菅直人政権は、太陽光など再生エネルギーの固定価格買い取り制度を推進した。当初、太陽光の買い取りは高価に設定され、全国各地にメガソーラーが次々に建設された。

 メガソーラーはシステムや制度上、必ず送電しきれない余剰が発生する。その使い道として、水素発生装置に目をつけた。

 余剰電気を使って、次世代エネルギーとして期待される水素を作る。

 昨年3月、実証設備「SHiPS(シップス)」を稼働させた。ソーラーパネルと水素ステーションを組み合わせ、普段は太陽光で水素を作り、非常時には貯蔵した水素で発電する「防災ステーション」の機能を持たせた。

 今年2月には、より効率的な実証装置も運転を始めた。コスト引き下げなど課題はあるが、15年後を目安に、普及を目指す。

 「エネルギーの多様化はますます進む。水素が全てではないにせよ、次世代エネルギーの何割かは占めるでしょう。水素利用を広める牽引(けんいん)役を担いたい」

 平成32(2020)年までに、売上高を現在の1・6倍、500億円の目標を掲げる。 (大森貴弘)

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