産経ニュース

広島のバーで被爆証言会150回 常連客が遺志引き継ぐ

地方 地方

記事詳細

更新


広島のバーで被爆証言会150回 常連客が遺志引き継ぐ

 広島市の歓楽街・流川にあるバー「スワロウテイル」で毎月開かれている被爆証言会が6日、150回目を迎える。12年前に会を始めた店主の冨恵洋次郎さんは昨年7月、37歳で亡くなった。存続が危ぶまれたが、遺志を継いだのは会の常連客だった。

 「会をやっていてくれないか」。広島を中心に活動する歌手でバーの常連客だったHIPPY(ヒッピー)さん(37)は昨年6月末、病床の冨恵さんにこう頼まれた。冨恵さんが肺がんで亡くなる4日前のことだった。

 証言会は広島に原爆が落とされた8月6日にちなみ、毎月6日夜に開かれてきた。平成18年2月から途切れることなく、複数回実施した月もあった。

 お酒は出さず、約1時間半、被爆者を囲む。場所柄か、若い世代の参加者も多い。

 始まりは祖母が被爆した冨恵さんがかつて、店に来た観光客から原爆について聞かれ、答えられなかったことだった。

 約10年前から店に通うHIPPYさんは広島生まれだが、原爆をそれほど意識してきたわけではなかった。しかし会をきっかけに、被爆証言を第三者が伝承する取り組みにも参加するように。

 今は他の常連客4人と一緒に運営しているが、被爆者探しはいつも苦労する。「毎月6日は来るのが早い。1人でしていた洋次郎さんは大変だったろう」と話す。

 会を継いで気づいたのは、被爆者が語ってくれるのは「当たり前」ではないということ。最近活動を知った叔母から、亡くなった父方の祖父が被爆者だったと伝えられた。明るい祖父だったが、父も知らなかった。「それくらい話せないことなのか」。毎月話してくれる被爆者の人に、なおさら頭が上がらない気持ちになった。

 HIPPYさんは「僕らは被爆者の生の声を聞ける最後の世代」と語る。自分たちが次の世代に伝えるためにも、できる限り会は続けていくつもりだ。