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【ZOOM東北】福島発 アニメで県産農産物PR 品質強調、海外も注目

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【ZOOM東北】
福島発 アニメで県産農産物PR 品質強調、海外も注目

 福島県が製作した県産農産物のPRアニメ「食べちゃったっていいのにな!」が話題だ。東京電力福島第1原発事故による風評払拭に苦悩する中、あえて「安心・安全」は使わず、農産品の良さや魅力をさりげなくアピールする内容に、「キャラクターがかわいい」「福島の食べ物が気になる」など、アニメファンの評価も高い。動画投稿サイト「ユーチューブ」にアップして約1カ月、視聴累計は260万回超で、海外からのアクセスも多く、手応えを感じた県は、新たな展開を検討している。 (内田優作)

 ◆ガイナックス製作

 製作費に5千万円をかけたアニメは全5話で、1話約5分。県や県内金融機関のアニメCMなどに携わった「福島ガイナックス」(同県三春町)が手掛けた。ハッピーアイランド(福島)にある「ふぁぁむ学園」で、県産米「天のつぶ」や桃、梨、キュウリ、川俣シャモ、ナメコなどの“妖精”たちが、県産農産物のおいしさの秘密や品質の良さ、セールスポイントを学ぶ設定だ。

 伊達市の特産品「あんぽ柿」をテーマにした「あんぽ柿のエステ」では、弾力のある独特の手触りを生む製法などを紹介。「天のつぶのつぶ立ちの話」では、天のつぶは冷めてもおいしく、親子丼や海鮮丼などのどんぶり物に適していることをアピールする。

 アニメ製作で特にこだわったのは「県産農産物の魅力をイメージさせる伝え方」だったと、鈴木秀明農産物流通課長は話す。「福島県は浜通り、中通り、会津のそれぞれの地域に根ざした多様性があるのに、それが理解されていない。ただ、単に消費拡大を呼びかけてもだめ。重苦しいことばかり伝えても、聞いてもらえない」(同)。そこで、新たな試みの道を選んだ。

 「アニメでは『安心・安全』とは一言もいっていない。風評払拭には、県産農産物を手にとってもらうことが大切。だから、質の良さを強調した」と鈴木課長。

 ◆豪華声優陣で話題

 もう一つのこだわりは、豪華な声優陣だ。テレビアニメやCMなどで活躍中の水樹奈々、上坂すみれ、梶裕貴らを起用。これがアニメファンの心をつかみ、ツイッターなど会員制交流サイト(SNS)でアニメの告知が広く拡散される効果を生んだ。また“異色の声優”瀬谷太郎さんも見逃せない。瀬谷さんは古殿町から県に出向中の職員で「声の仕事は、町内の防災無線ぐらい」という素人だが、「朴(ぼく)訥(とつ)な感じがいい」と浅尾芳宣監督が白羽の矢を立てた。毎回取り上げた県産農産物のセールスポイントなどを読み上げ、作品を締めくくる。

 「福島のいま」を国内外に発信するため、アニメは英語、中国語、仏語、スペイン語の字幕をつけた“外国語版”も配信。反応は上々で「フランスからのアクセスは70万回程度」(農産物流通課)という。

 風評被害は根強く、県産農産物の価格は、東日本大震災前の3分の2程度に低迷している。効果は未知数だが、アニメが販売促進や価格回復の要素になれば、と関係者が寄せる期待は大きい。

 アニメの高評価に鈴木課長は「私たちが伝えたい思いと、受ける側の思いには違いがある」と自らを戒めるようにいう。県産農産物の「多様性」と「良さ」。それを伝えるチャレンジは、さらに続く。