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無料上映会で被災者の心に灯火 住民交流の契機/感情はき出す場に 宮古

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無料上映会で被災者の心に灯火 住民交流の契機/感情はき出す場に 宮古

 東日本大震災の被災地で、地元住民を対象にした無料の映画上映会が、発生から7年たった今も続いている。避難生活で蓄積したストレスを発散する場や、引きこもりがちな住民が外出する契機になり、被災者の心に明かりをともしている。

 津波で517人が亡くなった岩手県宮古市。「みやこ映画生活協同組合」が経営する映画館は震災から約2週間後、再開した。だが多くの住民が自宅を失い避難を強いられる中、客足は戻らない。自ら映画を届けようと、配給会社から作品を無償で借り受け、平成23年5月に避難所や仮設住宅の集会所での巡回上映を始めた。

 赤字が膨らみ28年秋に映画館は閉じたものの、上映会は続行。プロジェクターやスクリーンを持参、沿岸各地で約600回開き、延べ2万人以上が足を運んだ。

 「男はつらいよ」シリーズを流し、参加した女性に「震災後初めて声を出して笑った」と感謝されたことも。「もっと不幸な人がいるから、と抑え込んでいた感情をはき出してもらえた」と同組合の櫛桁一則理事(45)は振り返る。

 東京電力福島第1原発事故が起きた福島県では、地元の映画関係者らが組織する「福島こどものみらい映画祭」(事務局・同県伊達市)が災害公営住宅を中心に活動、住民同士が交わるきっかけをつくっている。

 昨秋、同県会津若松市の公営住宅で開いた上映会に、自室に引きこもりがちという男性が姿を見せた。高齢で思うように体を動かせず、周囲と関わる機会が少なかったが、機材準備などを通じて参加者との仲を深めた。

 居住者の生活支援に携わるNPO法人職員、三瓶純子さん(47)は「一般的な交流イベントは料理教室やお茶会が多く、男性は参加しづらい。映画なら誰でも気軽に見られるし、感想を話し合い自然に打ち解けられる」と話す。

 一方で震災から7年が過ぎ、従来活用してきた被災者支援向けの補助金が終了するなど、主催者には困難な状況もある。しかし、「人の心に『完全な復興』は存在しない。何年たったから大丈夫ではなく、需要がある限り応えたい」と、みらい映画祭の金間登志江事務局長(55)は話している。