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【被災地を歩く】三陸沿岸道路のトラック便 首都圏の市場も視野 岩手

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【被災地を歩く】
三陸沿岸道路のトラック便 首都圏の市場も視野 岩手

 今月中旬、宮古市田老にある田老漁協の加工場を再訪した。最初は昨年2月だった。新鮮な海産物などを復興道路「三陸沿岸道路」を使って仙台市まで直送するトラック便の試験運行の取材が目的だった。出発点の加工場で第1便のスタートに立ち会った。

 再訪の目的は試験運行開始から1年あまりが経過したトラック便の現状について取材するため。というのも、試験運行の開始後に加工場がある宮古市田老以南の三陸沿岸道路の整備が急ピッチで進んだからだ。

 県内では昨年11月29日に山田宮古道路(山田IC-宮古南IC間約14キロ)が開通、供用済みだった山田道路(山田南IC-山田IC間約7・8キロ)と宮古道路(宮古南IC-宮古中央IC間約4・8キロ)がつながり、約27キロの連続した自動車専用道となった。

 宮城県内では南三陸道路の志津川IC-歌津IC間約7・2キロが昨年12月9日までに開通、三陸沿岸道路の起点、仙台港北ICから連続する自動車専用道が89・7キロに伸び、本吉気仙沼道路の大谷海岸IC-気仙沼中央IC間約7・1キロが今年3月25日に開通した。

 ◆時間短縮 「楽に」

 トラック便は昨年3月に試験運行を終了、違う形態で継続されていた。田老漁協の加工場を出発点に釜石市や大船渡市に寄って荷を積む運行形態はそのまま。朝7時すぎ、加工場で生産した塩蔵ワカメ40ケース(1パック100グラム、1ケースは25パック)を積み込んだトラック便のドライバー(47)から話を聞くことができた。

 ハンドルを握るようになって2年というドライバー(47)は「山田宮古道路の開通で10分ぐらい、気仙沼(大谷海岸IC-気仙沼中央IC間)の開通で20~30分は時間短縮になった。気仙沼市内は渋滞がひどくて時間が読めなかったが、気仙沼中央まで開通して楽になった」と整備効果を認めた。

 ◆ウニなど生ものも

 商品をストックする冷蔵庫を宮城県石巻市に借りているという加工場の鳥居高博工場長も「ここの特産は真崎わかめ。時間短縮できれば、塩抜きがいらない生のワカメも出荷できる。将来的にはウニなどの生ものも期待できる。冷蔵庫も大きな市場のお膝元である仙台に借りることも考えられる」と期待を寄せる。

 三陸沿岸道路は今年度中に岩手で36・5キロ、宮城で16キロが新たに開通、岩手は計画延長213キロの約58%(125・5キロ)、宮城は計画延長126キロの約91%(115キロ)の供用で、宮城は難工事が続く一部区間を除きほぼ完成することになる。岩手も来年度中に宮古中央IC以南は県境まで100・3キロの連続した自動車専用道になる。

 「三陸沿岸道路が全線開通すれば、仙台はもちろん常磐道を通って首都圏も市場になる」と話す運送業者の予想も現実味を帯びてきた。ただ、加工場近くの国道45号沿いに昨年9月オープンした「道の駅たろう」の女性職員の言葉が心に残った。

 「便利になるのはいいけど、高速を降りずにそのまま通り過ぎてしまわないかと心配です」(石田征広)