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無人の終着駅ご案内します 元機関士、JR備後落合駅の歴史伝える

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無人の終着駅ご案内します 元機関士、JR備後落合駅の歴史伝える

 庄原市のJR備後落合駅で、元国鉄機関士の永橋則夫さん(75)がボランティアとして乗客のガイドを務めている。最盛期に100人以上が働いた駅も、今はひっそりとした無人駅。かつてのにぎわいを伝えようと、当時の制服姿で昨年4月から続けている。

 JR西日本の広島、岡山、米子各支社の境界に当たる中国山地の山あいに位置。乗り入れる芸備線、木次線とも全列車が折り返す終着駅となっている。降り立つのは、駅に来ること自体を目的とした鉄道ファンや地元住民らに限られる。

 「駅名は3支社の路線が落ち合う、というのが由来です」。4月上旬の朝、駅に集まった乗客約10人に制服姿で駅の歴史や機関士の仕事を説明した永橋さん。「豪雪で立ち往生した機関車を乗客と押したこともあった」と思い出を語ると、驚きの声が上がった。

 見逃してしまいそうな古い駅の備品も紹介。約1時間のガイドを終え、列車の出発を見送った。兵庫県尼崎市の会社員、佐々木昌志さん(54)は「ここでしか聞けない貴重な話」と満足げだった。

 昭和10年の開業以降、交通の要衝として栄えた備後落合駅。45年ごろまで100人以上の職員が勤務し、付近には鉄道施設のほか、旅館や商店も立ち並んだという。

 だが、過疎化や交通手段の発達による利用客の減少、業務合理化などで平成9年からは無人駅となり、往時の面影は見られない。

 永橋さんは駅のすぐ近くで生まれ育ち、国鉄に就職。機関士や駅員などとして、JRへの民営化後も備後落合駅の移ろいを見続けてきた。「私以上にこの駅を知る人はいない」と自負する。

 全国で相次ぐ鉄道の廃線に「このままでは備後落合駅も危ない」とボランティアでのガイドを決意。資料収集や元同僚への聞き取りなど約半年の準備を重ね、昨年4月からほぼ毎日ガイドや駅の清掃で駅に立ち続ける。

 開始から1年。ガイド目当ての乗客も増えてきた。「鉄道と生きてきた自分の使命だ」。国鉄マンの誇りを持ち、駅を守るために語り続ける。