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【栃木この人】宇都宮大・杉田昭栄特命教授(65) カラス研究にゴールなし

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 宇都宮大農学部教授として長年、カラスの研究に打ち込んできた「カラス博士」が3月、定年退官を迎えた。4月からは特命教授として大学に残り、研究を続けている。

 カラス研究を始めたのは約20年前。実験用の鶏が襲われ、イタチの仕業と思ったらカラスだった。「変な生き物だ」と興味を持った。

 動物の脳解剖を専門としており、カラスの脳を解剖。見た瞬間、「これは面白い」。大きさこそ違うが、頭の骨は人間の特徴に似ている。「人間は大きな脳を入れるため頭の骨は硬いけど、層の薄い板のような構造。カラスの頭蓋(とうがい)も同じ感覚。小さい体の割に、骨は人と同じように合理的にできている」

 そして、カラスの生態や行動など研究の幅を広げていった。「こんな脳を持って何をしているか知りたいし、生活も見てみたい。専門領域を踏み外し、やったこともない行動学に踏み込んだ。脇道にそれるのは抵抗ない。研究者に必要なのは遊び心」。ゴールが見える研究もあるが、調べれば、また新しい疑問が出てきて、尽きない興味を追うエネルギーになる。

 宇都宮大での実験や国内外の研究で、カラスの思考の特徴が次々と明らかにされてきた。同大では、男女の写真を見せて、女性の写真を選ぶと餌を与えるという実験を繰り返したところ、別の男女の写真でも女性の方を選ぶようになった。概念的な思考ができ、写真から女性の特徴を引き出して選択できるという。

 海外の研究では、危険人物を認識させると、数年がかりで別のカラスがこの人物を見て激しく騒ぐようになった。危険人物を別のカラスに伝達できるという。また、小さな餌とおもちゃの選択の実験では、おもちゃをくわえて持っていくと、後で大きな餌をもらえることを覚えさせると、その後は小さな餌は選ばず、おもちゃをくわえて持っていく行動を繰り返す。後でもらえる餌のため、目先の小さな餌は選ばないという自制心と論理的思考ができるようになるという。研究が進み、知能や社会性の高さが分かってきた。

 一方、カラスは鳥害問題もある。「秋から冬にかけて大きな群れを市街地で形成し、問題となっている地方都市も多い」と指摘する。特に金沢市では兼六園に1万羽近いねぐらができた。観光都市だけに騒音、見た目の恐怖、衛生上の問題などがあり、市の依頼で対策に関わった。

 神話に登場する八咫(やた)烏(がらす)は、なぜ三本足とされたのか。最近はそんな研究も手がけた。自然科学を超えて社会問題、文学、民俗学とテーマが広がる。苦笑いしながらも多角的な研究に導いたカラスに感謝した。「それがカラスなんだな」(水野拓昌)

                   ◇

【プロフィル】すぎた・しょうえい

 昭和27年、岩手県生まれ。宇都宮大農学部卒業、千葉大学大学院医学研究科修了。宇都宮大に戻り、教授、農学部長を歴任。専門は動物形態学、神経解剖学。著書に「カラスなぜ遊ぶ」(集英社新書)など。芳賀町在住。

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