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【ZOOM東北】岩手発 釜石港「世界一深い防波堤」復旧 物流の拠点 復興を牽引

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【ZOOM東北】
岩手発 釜石港「世界一深い防波堤」復旧 物流の拠点 復興を牽引

 東日本大震災の津波で壊滅的な打撃を受けた岩手県釜石市の釜石港湾口防波堤が3月27日、7年ぶりに完全復旧した。海底まで最も深いところは63メートル。ギネス世界記録の「世界で一番深い防波堤」の完全復旧で、北海道から茨城県までの6道県で27カ所あった国有分の被災防波堤はすべてが復旧、今後の復興加速に期待が高まっている。 (石田征広)

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 「湾口防波堤の復旧には10年かかるだろう」。震災直後の釜石港の惨状に関係者は一様に呆然(ほうぜん)としたという。国は平成27年度までに復旧させる計画を立てたが、湾口防波堤は30年がかりの工事で震災2年前の21年3月に完成したばかり。5年で復旧させるには被害が甚大に過ぎたからだ。

 ◆資機材の調達が壁に

 990メートルの北堤は約120メートルを残して倒壊、開口部の海面下19メートルにある300メートルの潜堤は全壊、670メートルの南堤は約300メートルを残して倒壊した。全長1960メートルの「世界で一番深い防波堤」はその8割を失っていた。復旧に必要な膨大な資材と機材の調達が大きな壁となって立ちはだかった。

 防波堤は海底の基礎の上に巨大なコンクリート製の箱「ケーソン」を載せてつくる。欠かせないのが膨大な量の石だ。海底の基礎は台形状に敷いた石で、これに載るだけのケーソンが自重で波に耐えられるよう中に石を詰め込むからだ。量を確保するには遠く北海道や四国から調達せざるを得ず、復旧計画はいきなり2年遅れた。

 ところが、資材と機材が整い始めると、毎年100億円単位で計上された予算が復旧工事を加速させた。

 「震災前、湾口防波堤の整備費は年間20億~30億円。1カ所でしかつくれなかったケーソンが100億円単位の予算のおかげで2カ所でつくれるようになった。これが大きかった」

 こう振り返るのは25年度から2年間、国土交通省釜石港湾事務所の工務課長として復旧工事の発注役だった伊藤裕裁副所長。設計段階で海底の基礎を大幅にかさ上げすることでケーソンを小型化、工期を短縮する工夫も功を奏し、24年2月の着工から6年1カ月で完全復旧にこぎ着けた。

 ◆将来生きる経験と技術

 海面上6メートルの北堤と南堤に設置されたのは重さ2万トンのケーソン37個。ビル1階の高さが3メートルとすれば、20階以上のビルを990メートルにわたって沈めたのが北堤、670メートルにわたって沈めたのが南堤となる。重さ1個876トンのコンクリート製ブロック24個を300メートルにわたり設置した潜堤を含む総事業費は約657億円。

 これは27カ所あった国有分の被災防波堤の復旧費としては最高額だが、「減災を基本に1秒でも長く避難する時間をつくるため、海底の基礎の上に摩擦増大マットを敷いて東日本大震災クラスの津波がきてもケーソンがすぐ倒れない粘り強い構造にした。今後の防波堤整備に役立つはず」と伊藤副所長は語る。

 工事関係者も「短期間にこれだけ多くの工事量をこなすのは初めて。この復旧工事で蓄積した経験と技術は将来につながる」という。

 震災後、コンテナ専用のガントリークレーンが県内で初めて設置された釜石港は物流拠点として復興の牽引(けんいん)役が期待されている。同港の荷役を一手に引き受ける日鉄住金物流釜石の森本大三郎社長も「防波堤の復旧で安心して荷役ができる環境が整った。復興に向け大きな節目を迎えているコンテナ物流を全力で支えていきたい」と前向きだ。

 青森から千葉までの6県で100カ所に上る自治体所有の被災防波堤(国土交通省所管)も6月中に修理が終わる予定で、震災復興の相乗効果が期待される。