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【ちば人物記】「無借金経営」コメ農家の後継者・星慎さん(29)

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 ■農業の「未来形」を追求

 農業界では珍しい「無借金経営」をしている農家の後継者として、25歳の夏に就農した。5年目の田植えシーズンを迎えたこの春、千葉のコメどころ東庄町に広がる水田地帯でトラクターを走らせる。苗を植える前に田んぼを平らにならす「代かき」の作業に汗を流す日々だ。

 「苗を植えやすいように土を柔らかくしながら平らにしていくことが難しい。何年かやってみて、周りのベテランとの差が分かってきた。まだまだ下手だなって」

 生まれ育ったのは横浜市。マンション暮らしで農業とはほぼ無縁だった。高校卒業後、東金市へ移り住んだ。市内にある大学のメディア学部で学んだ。卒業後はホテルに勤務し、結婚披露宴などの宴会やパーティーを担当した。大学時代に出会った妻の実家が東庄町のコメ農家。結婚を機に、義父から「後を継いでほしい」と頼まれた。

 「はじめは躊躇(ちゅうちょ)したが、女性は自分の実家で暮らした方が幸せになれるのかなと」。妻や家族のことを思い、就農を決断した。きらびやかな場所でスーツを着ていた仕事から一転、全く世界の違う農家の仕事に、当初は「あまり前向きではなかった」と振り返る。

 そんな心境のまま1年ほど経ったころ、フェイスブックで知り合った柏市の農業生産法人「沼南ファーム」を経営する橋本英介さんの投稿を読んでいるうちに、農業に対する意識が変わった。

 「それまではトラクターの掃除は水浸しになるし泥だらけになるから大嫌いだった。でも橋本さんの投稿では毎日のように洗車をして『気持ちいい』と。きれいな環境で農業をしていて、ちょっと違うなと感じた。それに『農業はビジネス』とはっきり書いていることにも共感して励みになった」

 現在は東京ドーム約11個分に相当する約50ヘクタールの水田で、主食用米をはじめ家畜の餌になる飼料用米を中心に栽培する。1年に収穫するコメは5千俵(300トン)以上になる。

 「野菜や畜産に比べてコメは安いといわれるが、耕地面積の広さが機械代などのコストをカバーしている。値段は安いが、安定しているのが強み」

 国内でコメ農家の苦境が目立つ中、未来に向けた挑戦を続ける。最新技術の導入に積極的な義父の多田正吾さん(60)とともに、GPS(衛星利用測位システム)による自動直進機能を備える田植え機や、育苗や苗運びの手間を省くため鉄でコーティングした種もみを直まきする「鉄コーティング直播栽培」など、効率化、省力化を追求。こうした機械や設備は、借金をせずに購入している。無借金にこだわり、安定した家族経営を続けてきた義父の背中を見ながら、自分なりの将来像を見いだすことができた。

 「横浜の友人から『なんで農業をやるの?』と聞かれても、数年前は答えることができなかった。でもいまは違う。サラリーマンとの大きな違いは、自分次第で収入を変えることができるところ。『儲(もう)けるためにやっている』と自信を持って言える」(城之内和義)

                   ◇

【プロフィル】ほし・まこと

 昭和63年生まれ。横浜市出身。高校卒業後、東金市へ移住した。大学卒業後は同市内のホテルで働き、結婚を機に25歳から東庄町で農業を始めた。1男1女の父。義父の一家と4世代8人暮らし。

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