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名画、陶板に宿す 創業45年「大塚オーミ陶業」信楽工場を訪ねて

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 ■原寸大複製作品「『永遠』を作るやりがい」

 陶板で名画などの複製を手がける大塚オーミ陶業(大阪市中央区)が今年、創業45年を迎えた。先月下旬から大塚国際美術館(徳島県鳴門市)で公開が始まったゴッホの「ひまわり」全7作の原寸大陶板など、作品はすべて信楽工場(甲賀市信楽町柞原(ほそはら))で制作されている。従業員らは「焼き物の可能性を追求したい」と夢を追いかける。

 稼働中の窯で蒸し暑い工場を訪れると、従業員がゴッホの「ひまわり」に釉薬(ゆうやく)を塗っていた。同美術館への納入品と同一作品を資料用として制作しているのだ。

 陶板での絵画の複製は、まず現地の美術館を視察。持ち帰ったデータの色を分解し、特殊なシートを作成。絵画の表面のでこぼこも再現した白い陶板に高温で焼いて転写する。その後、6~7回窯にいれながら学芸員らと協議を重ねて、色を微調整していく。

 通常、陶器は一度しか焼けないが、温度管理や土の配合などの研究により焼き直しができる技術を開発。釉薬の配合により、焼くことで2万種類以上の色を編み出す。さらに、絵の具の具合で表面にでこぼこができる油彩画特有の特徴も追求。他にない精巧な技術で、大型美術陶板制作のパイオニアとなった。

 工場の従業員は、芸術系の大学や工学部出身者など約30人。林田慎市工場長(59)は「窯に入れて8時間、毎回祈るような思いで待つ。焼き物は常に挑戦できる素材。『永遠』を作るやりがいは大きい」と話す。

 同社は昭和48年、大塚化学など「大塚グループ」のグループ会社として陶器製品製造のために設立された。設立当初は、タイルなど建材を大量生産する製造拠点を愛知県内で設立する予定だったが、第1次オイルショックで方針転換。製品の量産ではなく、付加価値のある事業を目指すことになった。

 そのなかで半永久的に保存できる陶器の性質に着目し、名画や写真の複製事業に活路を見いだしたという。研究を重ね、55年に陶器の釉薬などが入手しやすい信楽町に拠点を置いた。

 その間に、建築物の装飾に用いる「テラコッタ」という素焼きの製品開発も進め、平成元年に国会議事堂の中央塔屋根部分の修理を実施するなどしてきた。

 平成10年、陶板で複製した西洋美術を中心に展示する大塚国際美術館がオープンし作品を供給。陶板で複製したレオナルド・ダビンチの「モナリザ」など世界の名画約千点が原寸大で並ぶ。年間38万人が訪れ“陶板芸術”の世界的な拠点になっている。

 先月21日から同美術館の開館20周年を記念し、ゴッホの「ひまわり」全7点をあざやかに再現し、同じ部屋で見ることができる展示室をオープンさせた。記念式典には「ひまわり」を保有するゴッホ美術館(オランダ)やフィラデルフィア美術館(米国)などから学芸員が訪れ「完成度が高く、一挙に見比べられるのは、非常に価値のある空間」などと絶賛されたという。

 大杉栄嗣社長は「約5千年前の土器が現存するように、陶器は耐久性に優れ半永久的に大切な物を残せる媒体」と話す。

 平成22年には文化庁の依頼で陶板による「キトラ古墳」(奈良県)の壁画を複製。「原寸大で気軽に見られる機会があれば、多くの人が芸術に興味を持つきっかけになる。文化財の保存にも貢献していきたい」とする。今後は、昭和24年に焼損した法隆寺(奈良県)の金堂壁画の復元にも取り組みたいと意気込む。(杉森尚貴)

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