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九州新幹線長崎ルート フル規格の優位、明確に 佐賀県の負担軽減へ「知恵を」

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九州新幹線長崎ルート フル規格の優位、明確に 佐賀県の負担軽減へ「知恵を」

 九州新幹線長崎ルートについて30日、一般の新幹線と同じ「全線フル規格化」の優位性が明らかになった。ただ、フル規格を採用した場合、佐賀県の負担が1100億円増えるという試算も出て、同県の山口祥義知事は改めて厳しい姿勢をみせた。最も効果のあるフル規格を実現するには、佐賀県の負担を軽減する仕組みづくりが必要となる。(高瀬真由子)

 国土交通省が与党検討委員会に示した報告書では、長崎-博多の所要時間はフル規格が最短の51分で1時間を切り、長崎-新大阪は3時間15分で結ばれる。

 運行するJR九州にとっては、現行の在来線特急と比較し、フル規格なら年平均88億円の収支改善効果があると試算された。一方、フリーゲージトレイン(軌間可変電車、FGT)は年20億円の損失になるという衝撃の結果が出た。車両の購入費や維持管理費が、通常の新幹線の2倍に上るためという。

 この結果、利用者の便益や事業者の収益を、建設費など総費用で割った費用対効果は、フル規格が最も優位だった。フル規格化を求める長崎県や、FGTに難色を示したJR九州にとって追い風となる。

 ■「乗る気はない」

 課題は整備費の地元負担だ。新鳥栖-武雄温泉の整備費は、フル規格の場合6千億円で、ミニ新幹線(1700億~2600億円)を大幅に上回る。

 整備新幹線の費用に関しては、国が3分の2、地方自治体が3分の1を負担する大枠がある。自治体負担は、国からの交付税措置なども勘案して計算する。

 フル規格を採用した場合、佐賀県の財政負担はこれまで、800億円の増加とされてきた。だが、30日の試算では、1100億円増加することが示された。

 佐賀県の山口氏は同日、記者団の取材に応じ「フル規格に乗る気はない。将来の不安がある中で、税金投入の意味をしっかりと考えなければいけない。1100億円ともなれば、佐賀県は(事業が)何もできない状態になる」と訴えた。

 国と佐賀、長崎両県、JR九州などの6者は平成28年3月、途中で在来線と新幹線を乗り継ぐ「リレー方式」によって暫定開業することに合意した。山口氏は「合意を守ってほしい。(フル規格は)議論の俎上(そじょう)にのぼっておらず、考えたことはない」と厳しい表情を見せた。

 ■西九州の100年

 整備費では、在来線の軌道幅を広げるか、外側にもう1本レールを敷いたミニ新幹線に軍配が上がる。

 だが、ミニ新幹線は在来線部分の最高速度が時速130キロで、フル規格(260キロ)の半分だ。事故などトラブルがあれば、新幹線、在来線が同時にストップする弱点もある。

 佐賀県の嬉野市商工会の小原健史会長は「新幹線によって福岡が通勤・通学圏になり、大阪から観光客が増えれば、経済効果は大きい。西九州の今後100年を考え、長期的な目線で資金調達を考えてほしい」と訴えた。

 長崎新幹線建設推進実行委員会の会長で、長崎県議会議長の八江利春氏は「安全性の観点からもフル規格が望ましい。費用の問題はあるが、佐賀県に働きかけ、将来のための話し合いをしたい」と語った。

 ただ、佐賀県がフル規格を呑(の)むことは難しい。現状ではフル規格どころか、「リレー方式」が固定されかねない。

 山口氏は、玄海原発再稼働や諫早湾干拓問題など、反対論もある課題で、国益の視点に立った決断をしてきた。高速鉄道ネットワーク形成も、日本の将来像に関わる。佐賀県がフル規格を受け入れられる枠組みが、必要となる。

 佐賀県議で、議会の西九州ルート整備促進議員連盟会長を務める石井秀夫議員は「財政論を盾にした主張を続ければ、前に進まない。負担のあり方について突っ込んだ議論をし、関係者で知恵を出し合うことが重要だ」と述べた。