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玄海原発、差し止め却下 「悪魔の証明」求めない冷静な判断

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玄海原発、差し止め却下 「悪魔の証明」求めない冷静な判断

 九州電力玄海原発3、4号機(佐賀県玄海町)をめぐる20日の佐賀地裁決定は、反原発派が求めた再稼働差し止めを認めなかった。科学的データに基づく「阿蘇山で破局的噴火が起きる可能性は極めて低い」という九電側の主張が、裁判所に届いた。司法リスクを乗り越え、玄海原発3号機は、23日にも再稼働する。(中村雅和)

 九州には火山が多い。九電は月に1回程度、気象台や大学関係者も招き、破局的噴火の兆候がないか調べている。その結果、数十年にわたる原発の運用期間中に、九州全域に影響するような破局的噴火の可能性は極めて低いとする。

 そんな九電をはじめ、全国の電力関係者は昨年12月、衝撃を受けた。

 広島高裁の野々上友之裁判長=定年退官=が阿蘇山の破局的噴火について「事業者(電力会社)が主張立証を尽くさない場合は、具体的危険の存在が事実上推定されると解すべき」との認識を示し、四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転禁止を命じたのだった。

 「『ない』ことを証明しろ」。いわば「悪魔の証明」を電力会社に求めた。

 伊方原発から阿蘇山は約130キロ離れている。玄海原発と阿蘇山も、ほぼ同距離だ。反原発派は勢いづいた。

 玄海原発でも阿蘇山が突然、大きな焦点となった。

 九電は、阿蘇山など過去に大規模噴火した九州にある5つのカルデラ火山について、地質調査のデータなどを詳しく示し、懸命の反論を試みた。

 破局的噴火を引き起こすと考えられる地下10キロより浅い部分で、マグマだまりが観測されていないというデータを示した。また、破局的噴火の前には、大規模噴火が起きるとされている。この大規模噴火についても、兆候が見られないと訴えた。

 こうしたデータに基づき「原発の運用期間中の破局的噴火の可能性は、極めて低い」と主張した。

 佐賀地裁の立川毅裁判長は、悪魔の証明を求めなかった。

 九電側の主張を「多くの知見および実例に裏付けられており、合理性がある」と認めた。逆に原告側に対し「破局的噴火の発生可能性が、相応の根拠をもって示されていない」とした。

 冷静で常識的な判断といえる。

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 原子力規制委員会は、原発立地に関する「火山影響評価ガイド」を平成25年に制定した。ガイドは科学的知見を取り込み、更新を繰り返している。

 ガイドによると、立地の可否を判断するにあたって、まず原発から半径160キロに位置する火山の活動可能性を評価する。「可能性が十分小さい」と判断できない場合は、噴火規模を推定する。それも難しい場合は、過去最大規模の噴火で、火砕流が到達するかを調べる。

 規制委のガイドは、国際原子力機関(IAEA)が24年に定めた火山に関する安全ガイドも反映させている。いわば国際標準だ。

 こうした科学的知見を積み重ねて、原発の安全性を訴える。その姿勢は「安全神話」ではない。

 東日本大震災後の長期にわたる全原発停止の期間、九電は火力発電用の燃料費が積み上がり、電気料金の値上げに追い込まれた。再び停止すれば、さらなる値上げは不可避となる。

 電力会社の弱体化は、電気代の急騰だけでなく、安定供給態勢も揺るがす。こうした「脱原発のリスク」と、数万年に1度とされる破局的噴火のリスクをてんびんにかけて、エネルギーを考える必要がある。