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【そして、志す】(2) 弦楽器指導者 桜井うららさん 愛知から大槌へ復興の音 岩手

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 「この歌、知ってるよね? 心の中で歌いながら弾いてね」

 岩手県大槌町。土曜日の午前、集会所で弦楽器をかまえる子供たちに、指導者の桜井うららさん(21)が語りかけた。近く開くコンサートに向けて、J-POPの曲を練習する小中学生もいれば、指番号だけが書かれた「メリーさんの羊」の楽譜とにらめっこする保育園児もいる。

 桜井さんが所属するエル・システマジャパン。南米ベネズエラ発祥の音楽プログラムで、被災地の子供を音楽で支援するため、平成24年に設立された。28年から大槌町での活動が始まり、常駐の弦楽指導者は桜井さん1人だ。子供に囲まれるにぎやかな毎日に、寂しくはない、と笑う。

 震災のとき、中学3年だった。進路も決まり、卒業式も終えて、愛知県の自宅でのんびり過ごしていた。

 突然、わずかな揺れを感じた。テレビをつけてみると「どういうことか理解できない」ほどの映像が目に飛び込んできた。

 ほどなく、アメリカにいたころのホームステイ先から「日本は大丈夫か」とメールが届いた。

 海外からも心配されるほどの事態だとようやく理解した。「どうしてこんな日に」と少しでも思った自分を恥じた。3・11は、大切な日。自分の誕生日だった。

 何かできないかと被災地に足を運び、目の前の光景にショックを受けた。ボランティアでも訪れるようになった。

 進学した短大で、エル・システマの活動を知った。そんなとき、大槌で指導者の募集があった。6歳からバイオリンを続けていたが、当時は趣味程度。それでも「自分のやりたいことが全部そこにある」と感じた。

 今こそ、あの日とまっすぐ向き合おうと思った。被災地に飛び込んで、弦楽器の指導者になると決めた。

 仮設住宅に暮らし、練習場所に通う日々を送る。子供たちと向き合うなかで、“震災慣れ”という言葉が頭に浮かんでくる。

 「大人は遊んでくれて当たり前。ものはあって当たり前」。道具を雑に扱う子を見ると、特殊な状況で育ったことを想像する。震災で親を失った子供もいる。母親に女手ひとつで育てられた自分の姿と重なることがある。だから、音楽の力で何かができたらと願う。

 夢は大槌にオーケストラを作ることだ。

 「音楽にはあらゆるジャンルがある。そして、オーケストラには、いろいろな人がいる。違う人の思いに触れて、いろいろな体験をしてほしい」

                  ◇

【プロフィル】さくらい・うらら

 愛知県稲沢市出身。サッカーでは全国高校総体に出場したことも。一般社団法人エル・システマジャパンの弦楽器講師。岩手県大槌町で、地元コーディネーター、支援に訪れる国内著名アーティストらとともに運営、指導にあたる。

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