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陸自ヘリ墜落事故 佐賀に波紋、オスプレイ配備へ影響は不可避

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陸自ヘリ墜落事故 佐賀に波紋、オスプレイ配備へ影響は不可避

 佐賀県神埼市の住宅街に陸上自衛隊のヘリコプターが墜落した事故は、陸自が計画する佐賀空港(佐賀市)への垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ配備に、影響を及ぼす。国防に理解を示す佐賀県の山口祥義知事は、受け入れの最終判断をできるだけ早く表明する意向だったが、県民の不安解消は容易ではない。(中村雅和)

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 6日午前、墜落現場を視察した山口氏の表情は厳しかった。現場では自衛隊員2人が死亡し、自衛隊が守るべき女児(11)が負傷した。痛ましく、衝撃的な事故だった。

 山口氏と神埼市の松本茂幸市長は、女児の両親、川口貴士さん(35)夫妻と面会した。

 「困ったことがあったら何でも言ってください」と松本氏が声を掛けると、夫妻は、静かに泣き続けたという。取材に応じた川口さんは「(面会では)うまく言葉にできなかった。娘はショックを受けているが、元気だ」と語るのがやっとだった。

 山口氏は視察後、事故とオスプレイ配備の関係を問う記者団に、「それはそれで、改めて考えていきたい」と述べた。

 オスプレイは従来の輸送機に比べ、航続距離が長く、スピードも速い。離島防衛や奪還能力を高めようと、陸自は配備を急ぐ。

 佐賀県議会と佐賀市議会は昨年、配備計画を容認する決議をそれぞれ可決した。山口氏も「国防は極めて重要な課題だ」と常々口にしており、受け入れ意向を示していた。

 駐機場予定地の地権者である佐賀県有明海漁協は当初、反対姿勢だったが、軟化の兆しも見られる。昨年12月、山口氏は同漁協の徳永重昭組合長との面談後「良い話し合いができたと考えている」と語った。

 地元の焦点は、空港建設前の平成2年、県と当時の漁協などが結んだ公害防止協定だった。協定の関連文書に「県は佐賀空港を自衛隊と共用するような考えは持っていない」と記されている。この文書の変更にめどが立った段階で、山口氏は受け入れの最終判断を示すとみられていた。

 だが、事故が起きた。

 ■「恐れ」どう拭う

 政府高官は「配備計画に影響しない」との見方を示す。有明海漁協の徳永氏も6日、産経新聞の取材に対し「ヘリの事故はあり得ると改めて認識された」としながらも、「事故とオスプレイ配備の関連について、漁協としてのコメントはない」と述べ、明確な反対の姿勢は示さなかった。

 それでも、自衛隊機が住宅直撃した事故の衝撃は大きい。

 墜落現場近くに住む主婦、吉海理恵さん(31)は「沖縄などでも事故が相次ぐ。たとえ原因が分かっても、恐怖はなかなか消えない。今まであまりオスプレイの話を意識していなかったが、これからは違う。抵抗感はある」と語った。

 県庁内では、配備計画への影響は不可避との考えが広がる。ある県幹部は「とても配備計画を持ち出せる雰囲気ではない。当分、議論は凍結されるだろう」とつぶやいた。

 さらに陸自の計画はオスプレイ17機と、約50機のヘリ移駐がセットになっている。ヘリの中には、今回墜落したAH64D戦闘ヘリコプターの同型機も含む。オスプレイだけでなく、通常ヘリの安全性確保の議論も関心事となる。

 半面、日本の安全保障環境の厳しさは変わらない。防衛力強化には国民の協力が必要であり、オスプレイ配備に向け、佐賀県民の恐れを拭い、理解を得る必要がある。