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使い道ない養殖魚の頭、桜島小ミカンの皮を食材に活用 鹿児島で研究会発足

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使い道ない養殖魚の頭、桜島小ミカンの皮を食材に活用 鹿児島で研究会発足

廃棄してきた食材の活用を探る鹿児島機能性食品研究会の設立総会 廃棄してきた食材の活用を探る鹿児島機能性食品研究会の設立総会

 ■「もったいない」精神 世界を市場、食料不足解消

 これまでほとんど使い道がなかった養殖魚の頭やミカンの皮などを、食材として活用するプロジェクトが、産地・鹿児島で広がりを見せている。関係者が集い、商品開発などに取り組む「鹿児島機能性食品研究会」が発足した。人口の爆発的増加によって、食料不足が世界的な課題となる中、「未利用資源」を減らす取り組みとして鹿児島から発信する。(谷田智恒)

 鹿児島サンロイヤルホテル(鹿児島市)で昨年12月10日、同研究会の設立総会が開かれた。鹿児島女子短大や県特産品協会、食品業者の関係者ら約30人が集まった。

 総会では、活動方針として未利用資源を使った商品開発を進めることを打ち出した。勉強会を兼ねた定例会を2カ月に1回のペースで開く。

 研究会の会長には、薬剤師で、食品加工業「日本食品」を経営する武昭一氏が就いた。武氏は、捨てられるか、飼料・肥料用にしか使い道がなかったカンパチなど養殖魚の頭部に、加圧加熱処理を施し、食品素材を開発した。

 武氏は「骨まで柔らかくした養殖魚の頭は、病院や学校の給食などへと用途が広げられる。マーケットは県内のみならず、全国、世界だ。“頭”を使って、鹿児島経済の活性化にもつなげたい」と述べた。

 研究会では、武氏の研究に協力してきた鹿児島女子短大の元教授、吉元誠氏らが顧問になった。

 吉元氏は設立総会に続き、「食素材の機能性研究の今後」と題して講演。自身が長年、宮崎県で取り組んだ芋焼酎の製造過程から出る廃棄物の活用方法などを紹介した。

 具体的には、デンプンかす繊維を、畑の雑草防止に使うシート状の「紙マルチ」や紙おむつに加工している。また、サツマイモの葉からポリフェノールを抽出し、サプリメントも開発した。吉元氏は「廃棄物の高付加価値化が重要。物質の特性、性質を捉えるといろいろできる」と語った。

 また、同短大の内匠正太准教授は、桜島小ミカンの皮や桜島ダイコンの葉などの利用について、可能性を強調した。かんきつ類の実や皮に含まれるポリフェノールの一種「フラボノイド」には抗酸化など健康機能性があることが知られる。内匠氏は「今後も機能性成分の分析や研究を通じて、健康・長寿社会へつながるヒントを解明したい」と述べた。

 総会後、鹿児島市のさつま揚げメーカー、有村屋が試作した、カンパチの頭のミンチが入ったさつま揚げの試食会が開かれた。同社によると、魚すり身と頭ミンチの配合比率に工夫したといい、風味付けに桜島小ミカンの皮を使った。有村興一社長は「養殖魚の頭は栄養価も高く、捨てられてきたのはもったいない。機能性食材として活用、商品化も検討する」と話した。

 ■「3分の1」

 人口急増に伴い、世界では食の確保が深刻な問題となっている。現在、70億の人口に対し、慢性的栄養失調の人々は約10億人いるとされる。全世界の人口は、2050年に95億人を超すと予想される。

 この状況が続くと、食料をめぐる外交摩擦や争いも危惧される。こうした食料危機に備え、先進国では「昆虫食」や細胞を培養した「人工肉」の研究も進む。

 もともと食の自給率が低い日本にとって、ひとごとではなく、未利用資源の有効活用は欠かせない。

 吉元氏は、収穫力の低い農地の生産性や、肥料と水の使用効率を高めるほか、生産・流通過程で生じる無駄も減らすべきだと強調する。「流通過程で全体の3分の1は捨てられる。これを食べていけば、食料不足解消の第一歩になる」。地方からの行動が始まる。