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漂着ロシア艦船乗組員を救助、「愛と勇気」語り継ぐ絵本出版 島根・江津で記念フォーラム

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漂着ロシア艦船乗組員を救助、「愛と勇気」語り継ぐ絵本出版 島根・江津で記念フォーラム

 日露戦争中、島根県江津市沖に漂着したロシア艦船の乗組員を地元住民が救った-という史実を語り継ごうと、市内の有志が絵本を制作した。この絵本の出版を記念したフォーラムが同市で開かれ、読み聞かせやコーラス、講演などで、参加者らが先人の「愛と勇気」をしのんだ。

 1905年5月、日露戦争終盤の日本海海戦で、露バルチック艦隊の特務艦「イルティッシュ号」が被弾し、今の江津市和木町沖へ漂着。荒海の中、住民らが救助に当たるとともに、亡くなった乗組員の慰霊碑も建てた。自らの危険を顧みず交戦中の敵国兵士を救出した住民らの行動は「人類愛と勇気に満ちている」と称賛され、この史実を語り継ぐ催し「ロシア祭り」が、形を変えながら現在まで続いている。

 絵本「こっちへこーい こっちへこーい~イルティッシュ号の来た日~」は、有志が実行委をつくり、制作を企画。地元のイラストレーター、みはしたかこさんが作画を手がけ、ロシア語と英語の文章も記載している。A4判、32ページで1800部を発行した。

 フォーラムでは、この出来事をテーマにした歌「イルティッシュ号」などが披露され、実行委メンバーで絵本の制作部長を務めた渡辺昭子さんが絵本の読み聞かせをした。

 講演で、講師を務めた安来市加納美術館の神英雄館長は「地域の歴史を積み重ねて日本史になる」と史実を語り継ぐ意義を強調。日本とトルコの友情を育んだ「エルトゥールル号」遭難のエピソードを引き合いに出し、「絵本などを通じてこの出来事を広く伝えていけば、日露間に新たな歴史が生まれるかもしれない」と期待を込めた。

 実行委は、同書を地元自治会や市内の公共機関などに配布。県内の図書館にも送付する予定で、希望する県内外の各種団体などへの頒布も検討している。問い合わせは市人権啓発センター内事務局(電)0855・52・1018。