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【ZOOM東北】青森発 六ケ所村再処理工場3年延期 原燃に問われる使命感

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【ZOOM東北】
青森発 六ケ所村再処理工場3年延期 原燃に問われる使命感

 日本原燃が青森県六ケ所村に建設中の使用済み核燃料再処理工場の竣工(しゅんこう)時期を3年延期し、平成33年度上期とした。安全管理上のトラブルが相次ぎ、原子力規制委員会の審査が長期化しているため。24回目の工程変更に核燃と共存共栄してきた地元からは、安全確保の徹底と同時に一日も早い完成を求める声が出ている。安全管理体制に対する不信感も根強く、原燃には改めて国策を担う使命感と緊張感が問われている。(福田徳行)

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 「大幅な工程変更で県民に大変なご心配をかけ、申し訳なく思っている。示した期間で何としても竣工を成し遂げる強い覚悟で取り組む」。昨年12月22日、工藤健二社長は固い表情で県庁で佐々木郁夫副知事に同工場の完成延期を報告した。3年の延期幅はこれまでで最長。佐々木副知事は「施設の経年劣化や点検の不備によるトラブルで審査が中断し、県民の信頼を損ないかねない深刻な状況だ。誠に遺憾」と苦言を呈し、安全確保の徹底を求めた。

 ◆「安全確保が第一」

 原燃は安全管理部門で事実と異なる社内報告書を作成するなどした問題で一昨年12月、規制委から報告徴収命令を受けた。こうした中、同工場では雨水流入や設備の点検漏れなどのトラブルが相次ぎ、規制委の新規制基準に基づく安全審査が中断。このため、原燃は現在、審査再開に向けた設備の総点検に取り組んでいるが、その数は約60万件にも及ぶため、1月末の完了目標は不透明な状況だ。

 総点検が終わっても審査後に本格化する新規制基準に基づく追加の安全対策工事がある。3年の延期幅で収まるのかどうか懐疑的な見方もある中、同村商工会の上長根浅吉会長は「安全確保が第一。3年間を有効に活用してすべて点検し、完璧な形で一日も早く完成させてほしい」と話し、安全性向上に向け延期に一定の理解を示す。

 竣工延期による地元経済への影響に関して上長根会長は「点検やメンテナンスなどもあり、あまり大きな打撃はない」と話す。工藤社長は同22日の会見で「地元の『また延期か』という指摘は甘んじて受ける。一日も早い竣工への期待を裏切ったことは慚愧(ざんき)に堪えない」と述べ、信頼確保に全力を挙げる姿勢を示した。

 同工場は過去に高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)技術のトラブルが続発し、延期を繰り返してきた。工藤社長は「かつてとは違い、技術は確立している。原発事故の反省に立ち新しい安全、安心を確かなものにしていく」と話し、これまでの延期とは意味合いが違うことを強調した。

 ◆組織体質の改善を

 では、なぜ着工から24年、新規制基準への適合申請から4年経っても合格が見通せないのか。電力関係者の一人は「当初は各電力会社からの出向者が多かったが、最近ではプロパー社員が増え始めている。ただ、意思の疎通ができているのかどうか…」と組織体制の在り方を指摘。社員約2600人のうち生え抜きは8割を超え、県内出身者も多く、代表的な地元企業の一つだが、数年で交代する出向者とプロパー社員の間で技術面も含めた意見交換が十分だったのかどうか。工藤社長は「コミュニケーション不足は確かにある。さまざまな対話活動に努めていく」と話し、体質改善の必要性を強調する。

 同工場の使用済み燃料貯蔵プールは現在、約99%が埋まっており、完成延期によって再処理できない状態が続いている。国内の原発では使用済み核燃料がたまり続け、今後、規制委の審査合格を経て各原発が再稼働すれば、状況はさらに逼迫(ひっぱく)する。一方で、予期しないトラブルや規制委の審査の進捗状況によっては25度目の延期も現実味を帯びてくる。「何が何でも3年でやり遂げる」(工藤社長)。そのためには、組織の根本的な体質改善と社員のマイプラント意識の醸成にかかっている。