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横浜のIR誘致問題、結論出るまでさらに曲折

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横浜のIR誘致問題、結論出るまでさらに曲折

 再開発が計画されている山下ふ頭を中心に、横浜臨海部へのカジノを含む統合型リゾート施設(IR)誘致をめぐり、今夏の横浜市長選でも争点の一つになるなど、常に話題になり続けた「横浜・IR誘致問題」。林文子市長は昨年12月のIR整備推進法成立を受け、積極誘致を掲げていたが、ギャンブル依存症対策を優先する必要性を理由に一転してトーンダウン。カジノではなく大規模「MICE」施設を誘致する動きやIR誘致の態度を貫く地元経済界の動きも相まって、結論が出るまでにはさらに曲折がありそうだ。

 今年の年初、林市長はIR整備推進法成立を受けて、「財政基盤の強化を図らなければならないが、残念ながら法人税収が少ない」とした上で、「海外のお客さまを呼ぶ手段として、IRは観光や文化芸術推進の面からも魅力的。そこに世界最高水準の厳格な規制をしたカジノが入るのは、有力な手法と考えている」と、誘致に積極的な態度を表明していた。

 ところが長島一由元衆院議員が「IR誘致絶対反対」を最大の公約に掲げて市長選への立候補を表明。林市長はその後、「引き続き(IR誘致に向け)調査はするが、国のギャンブル依存症対策の動向が固まるまでは慎重に対応する」と、トーンダウンさせた。

 ◆争点化を避けて

 7月の市長選では、争点の一つとして「IR誘致の是非」が掲げられ、長島氏と伊藤大貴元市議の2人が反対の立場で選挙を戦った。伊藤氏の支援者は、街頭で「カジノ誘致」に反対か否かのシール投票を行い、多くの有権者は「反対」にシールを貼るなど、ムーブメントを感じる場面もあった。

 ただ、2氏が“一大公約”として掲げた「IR誘致反対」のテーマについて、林市長が争点化を避けたこともあり、結果として圧勝。選挙後も林氏は「ギャンブル依存症対策優先」の方針を変えず、市長周辺では目立った動きがない状況だ。

 一方で、横浜港運協会の藤木幸夫会長が数回にわたって記者会見などを開き、「山下ふ頭にカジノはいらない」と明言。広大な敷地を生かして企業の会議や研修施設、あらゆる文化芸術を上演できる大ホールなどを盛り込んだ世界規模のMICE施設を中核に、再開発を進めたいとの意向を示した。

 ◆経済界は一貫して

 市のIR構想や事業を公募する考えとの方向性の違いから、現在、同協会側は山下ふ頭からの移転・撤退を凍結している。ただ、MICE施設の整備に向けた議論を前進させるため、今後、腰を据えて市と協議して、事業概要案を提出したい考えを持っている。

 11月27日には、県議会の観光振興・統合リゾート議員連盟(IR議連)が山下ふ頭を視察し、その後、勉強会を開催。出席した藤木会長は「私は、市が考えている以上に山下ふ頭のことを考えている。カジノをやるつもりはない」と改めて強調した。担当者は「山下ふ頭が保税地域であるメリットを生かし、税金を払わずに鉄道車両など大型インフラを海から運び入れ、展示できるような国際的観光MICEを設けるべきだ」との考えを示している。

 もっとも、横浜商工会議所など地元経済界は一貫してIRの積極誘致の方針にぶれはない。

 「社会的不安の払拭と IR誘致を並行して進めていただきたいと再三主張している。この考えは従来と変わらない」。11月末に開催された商議所の会頭記者会見で、上野孝会頭はこう述べた。

 ◆出遅れにも懸念が

 IRを担当する川本守彦副会頭は「野党間のねじれや(他の)各種法案の審議もある。慎重を期すならば時間がかかるのはしょうがない。IRの地域認定は2021(平成33)年以降であり、あせってはいない」と話す。

 かつて「オール横浜」でIR誘致に取り組むとしていた林市長が態度を保留していることもあり、動きは一旦ストップしている状況だが、今後、国の依存症対策が示され、実施法案が可決すれば「横浜誘致」の動きが再燃するとみられる。

 ただ海外をみると、日本はIR導入では大きく出遅れている。すでに参入しているシンガポールや韓国、中国などを上回る魅力を出せるのか、また税収につながる収益を確実にあげられるのか、など未知数な面も多いことも事実だ。

 実施法案の審議が後ずれしているこの期間を生かして、IRを誘致するにしても、決して「負の遺産」とならないよう、市としての議論も深めてもらいたいし、取材を通してその行方をしっかりと見守っていきたいと、痛感させられた1年だった。(那須慎一)

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【用語解説】IR

 「Integrated(=統合された) Resort」の頭文字をとったもので、国内の議論では「カジノを含む統合型リゾート施設」を指す。カジノのほかホテル、エンターテインメント施設、国際会議場などが一体となった施設となる。日本に先んじて米国やアジアなどを中心に、各地で大規模なIRが整備されている。