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【ZOOM東北】山形発 サクラマス、遊佐町で陸上養殖 東京五輪に最高級品を

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【ZOOM東北】
山形発 サクラマス、遊佐町で陸上養殖 東京五輪に最高級品を

 山形県の県魚「サクラマス」を高級ブランド化しようと県北部の遊佐町で陸上養殖の実証実験が始まっている。平成30年5月までに体長50センチ、1・2~1・5キロサイズまでに育てて、東京五輪・パラリンピックが開催される32(2020)年度にサクラマスの最高級ブランドを作るのが目標という。(柏崎幸三)

 実証実験が行われている遊佐町は、庄内砂丘の北端に位置し強い風が吹きつける。この地で実験施設が稼働したのは9月末。マルハニチロ、キッツ、JXTGエネルギー、水産研究・教育機構、山形県、香川高等専門学校の産官学6者が総事業費約3億円をかけ、日本固有種のサクラマスを水産資源として養殖し、輸出可能な最高級ブランドを作るのが狙いだ。研究実施責任者のマルハニチロ中央研究所の圓谷猛さん(50)は「日本人はみな輸入物を食べている。日本固有の魚を食べているわけではないんです」という。

 ◆漁業者と漁獲高減少

 淡水魚のヤマメは、海に降りる降海型と陸封型に分かれる。この降海型がサクラマスで、川で生まれたヤマメは1年半ほど川で成長し、特有のパーマーク(斑点)が消え、体表が銀白色に変わる銀毛(ぎんげ)化する。降海前に海水に耐えられる浸透圧調節ができるように体質を変えるのだ。この銀毛化したヤマメのみが降海し、サクラマスになる。

 山形県では平成3年に1180人(海面)いた漁業者が、25年には474人に減少、サクラマスの漁獲量、生産額も減少の一途だ。県庄内総合支庁水産振興課の佐藤年彦課長補佐は「海の定置網で漁獲できるサクラマスの漁獲量は減少傾向にある」という。大江町にある県サクラマス古寺ふ化場で孵化(ふか)させたヤマメを県内の内水面漁協は河川に放流しているが、サクラマスの減少に歯止めがかからないのが現状だ。

 ◆「地域活性化にも」

 サクラマスを「幻の魚」にしないためにも養殖は必要だ。実証実験では、採卵し、孵化させた稚魚を移入し、6~7カ月で1・0~1・5キロの商品化サイズまで安定して育てる。そのためサクラマスに適した水温や光条件、人工餌なども研究、開発している。

 実験施設内の大型水槽に移入した25センチ程度のヤマメは「順調に生育している」(圓谷さん)という。県水産振興課の本登渉課長補佐は「魚価の高いサクラマス養殖は漁獲高を補い地域活性化にもなる」とする。

 天候の影響少なく

 実験施設は海水を揚水し屋内で育てる陸上養殖で、海中養殖に比べて天候の影響を受けにくく、水質を衛生的に保つことができ、病気の発生リスクを軽減。北欧などの海面養殖に多い環境負荷も下げられる。

 マルハニチロでは、東京五輪・パラリンピックまでに国内消費向けだけでなく国際ブランドに育てるのが狙いで、年間1千トンのサクラマス生産が目標だ。

 圓谷氏は言う。

 「日本人に日本固有種の最高級のマスを食べてもらいたい。東京五輪に私たちのサクラマスを出すという夢を持っているんです」