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伊方原発差し止め 翻弄されるエネ政策…「電力事業継続できない」

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伊方原発差し止め 翻弄されるエネ政策…「電力事業継続できない」

広島高裁の仮処分決定後、厳しい表情で取材に応じる四国電力の関係者 広島高裁の仮処分決定後、厳しい表情で取材に応じる四国電力の関係者

 広島高裁が13日に出した四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止め決定に、九州電力をはじめ九州の経済界は大きな衝撃を受けた。3人の裁判官は、原発から約100キロ離れた場所に住む反対派の訴えと、数万年に一度規模の噴火を重視し、科学的知見にのっとった安全審査の結果を覆した。電力業界からは「安価で安定した電力を届けるのが使命だが、事業継続が難しくなる」との声が上がる。 (中村雅和)

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 「火山の影響による危険性について、伊方原発が新規制基準に適合するとした原子力規制委員会の判断は不合理だ」

 広島高裁の野々上友之裁判長は、最大のリスクとして、阿蘇山の噴火を挙げた。

 四電は訴訟で、阿蘇山が大規模に噴火しても、原発の敷地に火砕流が到達する可能性は小さいと主張した。原発が立地する佐多岬半島で現在まで、9万年前の阿蘇山の大噴火に由来するとみられる堆積物が発見されていないことを理由に挙げた。

 この点を野々上裁判長は「火砕流が到達してないと判断することはできない」と切り捨てた。「堆積物が残りがたい地形だ」。これが根拠だ。

 つまり、「佐多岬は火砕流の堆積物が残りにくいから、火砕流が来なかったとはいえない」という理屈で、原発の運転差し止めを命じた。

 また、規制基準では九州北部一帯を火砕流で埋め尽くすような大噴火の場合、数十年規模のマグマの移動など兆候があり、対応できるとしている。

 火山も含め、新しい規制基準については、国際原子力機関(IAEA)も、福島第1原発事故の教訓を実効的に反映にさせた、と評価している。広島高裁はこの点も認めなかった。

 この仮処分の結果、失う物は大きい。

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 まず、原発が運転できないことによって、火力発電用の燃料費が増加する。四電の場合、伊方3号機停止で、月約35億円も収支が悪化する見通しだ。

 四国という経済規模の小さなエリアにとって、四電の存在は大きく、その収支悪化はエリア経済全体の悪化につながる。

 エネルギー自給率の低下による国際競争力の落ち込みや、二酸化炭素排出量の増大など環境問題もある。

 しかも今回の仮処分は、噴火リスクを理由とした。反原発派は今後、全国の原発訴訟で、同様に噴火リスクを前面に打ち出してくるだろう。

 九電どころか、全国の電力会社にとって対岸の火事ではない。

 福島の事故後、全国の原発の長期停止によって、平成23~27年度で計14・7兆円もの燃料費が余分にかかった。この結果、電気料金は大幅に上がった。全国平均で家庭用25%、大口40%もの上昇だった。

 訴訟によって、全国の原発が停止に追い込まれれば、こうした事態の再現となる。

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 原発は確かにリスクがある。ただ、資源小国・日本には「原発がないリスク」も存在する。

 原発がなければ、生活や経済活動の基盤である「安価で安定した電力」が揺らぐ。広島高裁の決定は、こうした「原発のないリスク」に目をつぶったものといえる。

 福岡商工会議所の礒山誠二会頭は「電気料金が上がれば、企業の競争力や生活に影響がある。最終的にはコストは、国民が負担しなければならない」と語った。ある電力会社首脳は「司法判断が揺れ動く状況で、腰を据えた投資など不可能だ。電力事業の継続も厳しくなる」と嘆く。

 国の長期的なエネルギー政策を考える上で、司法リスクはもはや無視できないほど大きくなった。最高裁での判例が確立するしか、司法リスクは軽減できない。

 さらに政府・与党は、原発が持つリスク、そして「原発のないリスク」を明示して、エネルギー政策を国民に問う必要がある。