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江戸前漁業を次世代に 船橋の網元が「漁魂」出版 五輪見据え世界に発信

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江戸前漁業を次世代に 船橋の網元が「漁魂」出版 五輪見据え世界に発信

 船橋港を拠点とする三代目網元、大野和彦さん(58)が「江戸前漁業を次世代に伝えたい」として「漁魂(りょうこん)」(ソーシャルキャピタル)を出版した。2020年東京五輪・パラリンピックを見据え、新鮮でうまい「江戸前」の魚介類を「EDOMAE」として世界に発信することを目指す。

 大野さんは昨年4月から、「東京五輪で世界から集まる人々に江戸前の鮮魚を振る舞いたい」「先祖から受け継いできた江戸前漁業を持続可能なものとして次世代に伝えたい」との思いを抱き、執筆を始めた。資料を収集し、しけで漁に出られない日にパソコンに向かった。

 「漁魂」には東京湾の漁業の現状や問題点、若い漁師の実像、漁業の喜びなどが自らの現場体験を基に生き生きと記されている。

 「夢と野望のすべてを本にぶつけた。半分は自叙伝です。魚食を愛する人々や漁業に関心を抱く中・高校生にも読んでほしい」と語る。

 大野さんは網元の長男として生まれた。大学時代は環境汚染が問題となっていた東京湾の漁業に明るい展望を抱けず、商社マンを目指した。ところが、病床に伏した祖父が大野青年の手を握り、言葉を絞り出した。「後を頼む」。「大丈夫。俺がやる」と返答するしかなかったという。

 大野青年は漁船に乗り込んだ。飯炊きや雑用など下積みから始め、ベテラン乗組員の仕事ぶりを見て学んだ。30代で漁労長になった。気象条件や潮の流れ、各船の漁獲量など日々のデータをパソコンに打ち込み、漁場を探す。当時は漁獲量優先主義で「一攫千金、一網打尽」と公言していた。

 ところが、最近、漁業資源の枯渇問題を考えるようになった。東京湾ではスズキが豊漁だが、大野さんは「産卵期のスズキは獲らない」と宣言している。また、水揚げしたばかりのスズキの神経を抜き「瞬〆(しゅんじめ)」にして出荷。一流料理店などで高い評価を得ている。大野さんは「漁師を目指す若者は多い。次世代のことを考えて東京湾の限られた漁業資源を管理し、魂を込めて漁を続けていきたい」と訴えている。

 「漁魂」は2千部発行。定価1700円。問い合わせは(電)03・6459・7115(ソーシャルキャピタル)。(塩塚保)