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長距離フェリーの経営苦境 LCCの台頭、燃油価格高騰 航路存続へ官民一体 九州・山口

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長距離フェリーの経営苦境 LCCの台頭、燃油価格高騰 航路存続へ官民一体 九州・山口

官民連携の支援が決まった「宮崎カーフェリー」の船=宮崎港 官民連携の支援が決まった「宮崎カーフェリー」の船=宮崎港

 都市部と九州・山口などの地方とを結ぶ長距離フェリー会社の苦境が目立つ。格安航空会社(LCC)の台頭で旅客が流出しているのに加え、一時期の燃油価格高騰も影を落とし、深刻な経営難に陥るケースもみられる。トラックの運転手不足で、農畜産物の安定輸送に不可欠なことから、「地方経済の要」の航路存続をいかに図るかが新たな課題となる。

 ◆生命線

 「県が主体的に出資し、再生を図るのは、われわれとしても初めてだ。ぜひ成功させたい」

 政府系ファンド、地域経済活性化支援機構の今井信義社長は20日、宮崎市で記者会見し、経営難のフェリー会社「宮崎カーフェリー」(宮崎市)が持つ神戸-宮崎間の航路存続に向け、再生支援を表明した。

 足元では黒字を維持してきたが、債務超過を解消できない状況だった。

 新会社に、機構や宮崎県、地元銀行などが計11億5千万円を出資し、信用力を高めて再生を図る。

 河野俊嗣宮崎県知事や地元銀行幹部らも会見に同席し、官民一体となり支援する姿勢を強調した。

 宮崎県はピーマンやマンゴー、牛肉といった農畜産業が地元経済を支える。

 この航路は大消費地へと一度に大量輸送する唯一の手段で、河野知事は「県が主導し、宮崎経済の生命線を維持する」と語った。

 ◆対抗困難

 鹿児島県を中心に、長距離フェリーを運航する「マルエーフェリー」(同県奄美市)は10月、神戸から奄美群島を経由し、沖縄を結ぶ旅客船を休止した。

 かつては帰省客でにぎわったが、近年のLCCの離島便の就航などで赤字基調となり、利用客の増加が見込めなくなった。

 マルエーフェリーの担当者は「船では神戸から奄美まで片道1万5千円ほどで、30時間以上かかる。LCCの便であれば、最低数千円からの利用が可能だ」と、対抗するのは難しいとの見方を示す。

 県本土と離島とを結ぶのみとなった旅客航路は「奄美大島などが世界自然遺産に登録されると、観光客増が見込める」として維持を図る。その上で、「島民の生活航路でもある。維持には安定経営が必要であり、好調な貨物重視へと早めに手を打った」と強調した。

 ◆追い風

 長距離フェリーを運航する事業者らでつくる「日本長距離フェリー協会」の加盟会社では現在、全国で14航路が就航中だ。このうち、北海道発着が6航路、九州発着が8航路だ。

 いずれも農畜産業が盛んな遠隔地から都市圏への物資輸送で、存在感を発揮している。

 関係者は「トラックの人手不足はフェリー業界にとって追い風だ」と期待する。国が鉄道や船舶輸送への転換を促す「モーダルシフト」も背景に、トラック運転手の負担を軽減できるフェリーの人気は高まる。

 ただ、燃料油に絡む国際的な規制強化が平成32年1月に始まる。

 燃料コストが上昇する恐れがあり、フェリー業界関係者は「運賃が高額になれば利用が落ち込みかねず、経営への打撃は避けられない」と懸念する。

 燃費の良い新船への切り替えを円滑に進めながら、いかに利益を確保するかが課題となりそうだ。