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維持に苦心しても…離島にブロードバンドは「頼みの綱」 企業誘致、移住促進の基盤

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維持に苦心しても…離島にブロードバンドは「頼みの綱」 企業誘致、移住促進の基盤

 政府が都市部と地方の情報格差の解消を目指し、ブロードバンド(高速大容量)通信の全国整備に力を入れる中、九州に多い離島を抱える自治体が、対応に苦心している。通信環境の確保は災害時の情報収集・発信で力を発揮するほか、移住者の誘致へ利便性をアピールできる。ただ整備後の維持費用が自治体の負担となるケースも多く、悩みの種となっている。

 「利益が見込めず民間事業者は参入しない。島民の生活の質を保つには、行政が担うしかない」

 九州本土の南西約40キロに浮かぶ硫黄島、黒島、竹島の3つの島に計約200世帯が暮らす鹿児島県三島村の担当者は、村が主体で通信サービスを提供する理由をこう話した。

 三島村は国の交付金で平成23年に、約28億円かけて総長約192キロの海底ケーブルを敷設した。各家庭に光回線を引き、インターネットに接続するための端末も無償提供した。月額3千円でWi-Fiを利用できるとあって、半数の約100世帯が契約している。

 設置は交付金を活用したが、維持費は村の負担だ。点検などで年間約800万円かかるほか、28、28両年は台風で回線が切れるなどし、復旧に計約3千万円を要した。

 ◆ケーブル断線

 同様の問題は各地で起きている。11の有人島からなる長崎県五島市では27年8月、久賀島と奈留島を結ぶ海底ケーブルが断線し、198世帯でインターネットが不通になった。

 現在は無線でのネット接続を利用しているが、ケーブル復旧には十数億円がかかるとみられ、見通しは立っていない。

 27年の落雷で無線設備が破損した鹿児島県十島村の諏訪之瀬島では、鹿児島本土から業者を呼び、外国から部品を輸入するなどして復旧に83日間かかった。塩害による経年劣化も激しく、定期的な機器の交換も必要だ。

 それでも十島村の担当者は「移住者を呼び込むため安定したネット環境は前提条件だ」と語った。人口減に悩む離島が多い中、十島村ではネット整備も追い風に、27年の国勢調査で5年前から人口が約15%増えた。

 ◆防災にも威力

 高速通信網は、災害時の役割も期待される。通信網の整備に詳しい鹿児島大の升屋正人教授は「避難者の情報収集にも被災状況の発信にもネットは欠かせない」と利点を強調した。

 大分県姫島村では、ソフトウエア開発を手掛ける東京のIT企業2社による開発拠点の開設が決まった。国と県、村が情報通信整備の費用を負担し、新たに村役場からオフィスへの有線回線を引き、進出を後押しする。

 企業進出で若者に新たな雇用機会が生まれれば、地域活性化にもつながる。県企業立地推進課の担当者は「誘致を進め、若い人が戻って来られる仕事を用意したい」と話した。