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「勝って柏を盛り上げる」公約守る IBF世界スーパーバンタム級王者・岩佐亮佑選手(27) 千葉 

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「勝って柏を盛り上げる」公約守る IBF世界スーパーバンタム級王者・岩佐亮佑選手(27) 千葉 

 ボクシングIBF世界スーパーバンタム級タイトルマッチ(9月13日、大阪)をTKOで制した柏市出身プロボクサー、岩佐亮佑選手(27)が世界王者となって20日で1週間。岩佐選手と所属ジムのセレスボクシングスポーツジム(柏市)会長で元世界王者、セレス小林氏(44)が産経新聞のインタビューに応じ、「敗けを経験した2年前の世界初挑戦の続きをずっと闘っているつもりで臨んだ」と喜びを語った。 (菊池一郎)

 第6ラウンド、レフェリーストップでTKO勝ち。圧勝に見えた。が、リング上での勝利者インタビューで「今日はたまたま僕の日だっただけ」と話した。岩佐選手は言う。「王者の小国(以載)さん=角海老宝石=への敬意もあったが、プロレベルの勝敗は紙一重。ラウンドごとの採点で優っても、ラスト10秒で食らったパンチで倒されることもある」。実力だけでなく、神様が微笑んだ側が勝つ…。超一流とはそういう世界か。「辛い練習や考え抜いた作戦。自分を信じ、祈ってましたよ、9月13日が僕の日であれって」

 ◆強くなりたかった

 ボクシングを始めたのは「男だから強くなりたかった」から。2003年、中学2年で、柏市にできたばかりのセレスジムの門を叩く。「ダイヤの原石」と見抜いた小林会長。すぐにもプロ入りしたかったが、小林会長から「アマで経験を積むことも強くなるには大事」と諭され習志野高へ。国体、選抜、インターハイの高校3冠を達成、ずば抜けた動体視力の持ち主として将来を属目された。

 08年にプロデビュー。白星を重ねたが、11年に当時の日本バンタム級王者、山中慎介選手=帝拳=にTKO敗け。15年6月の世界初挑戦、英国で行われたIBFバンタム級暫定王座決定戦では、リー・ハスキンス選手(英国)にポイントで先行され、「自分を信じ切れず」(岩佐選手)、持ち味の足の動きを止めて打ち合ってしまい完敗した。

 世界に近かったはずが遠回りのボクシング人生へ。「自分はチャンピオンになれない人間では?」と悩みながらも、「練習は苦しいけれど、ボクシングの楽しさの方が上」という気持ちは揺るがなかった。

 ◆引退覚悟の闘い

 「今回はイギリスの敗戦から得た勉強を活かすリングだった」と岩佐選手。小林会長は試合前、2人きりになって語りかけた。「イギリスの世界戦は終わっていない。おまえの力を信じている。俺をもう一度、世界のテッペンに連れて行ってくれ」。元WBA世界スーパーフライ級王者である師との二人三脚は同時に、「世界を狙うラストチャンス」と引退覚悟の闘いでもあった。

 優勢で迎えた第5ラウンド。顔面から大量出血しながらも前に出るチャンピオン小国選手のペースに「動きを止めて打ち合おうかと考え」てしまい「心が折れかけた」場面も。だが、小林会長の「やろうとしていたことをやろう。相手に付き合うな」とのアドバイスで我に返る。「足を使い相手との距離をあける、だ」

 ◆「行くのは今」

 第6ラウンド。動きが戻りパンチが再び入り始めると、小国選手の顔面の出血が増えた。「覚悟を決めれば勝てる。行くのは今」。イギリスの時とは違う。相打ちやスタミナ温存のことなど瞬時に計算でき、「自分との相談ができた」(岩佐選手)うえでの猛攻。世界を極めた瞬間だった。

 「教えてもらっているボクシングが世界に通用すると証明できた」。ジムの移籍を勧める周囲の声も本人や家族にあったというが、「会長は僕の親。考えたこともない」。実父、岩佐正利さん(61)からも「人を裏切ることはやるな」と薫陶を受けてきた。

 「勝って柏の街を盛り上げる」との公約を守った岩佐新王者。今後のチャンピオンロードに注目したい。

 セレスジムでは岩佐選手らをサポートする会員を募集中。【問】同ジム(電)04・7165・1175。

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 ◆感謝や謙虚さ わきまえる

 1989年12月26日、柏市出身。独身。身長1メートル71センチ、リーチ1メートル80センチ。24勝(16KO)2敗。家族は両親と姉。小林会長も「親」。趣味は釣り。魚好きで柏市内の鮮魚店に勤めてきた。左構え。ニックネームはイーグルアイ。中3の時、部活動のことをきっかけに父から「ボクシングをやめろ」と言い渡されたが、小林会長が「本当にやめていいのか?」と言ってくれ、「その場でお父さんに「『私に任せて下さい』と電話し、ならばお預けします、となった」(小林会長)。個性的な男は今…。「自分で言うのも変だけど、僕いい人(笑)。会長の人への接し方を見て、この人を真似て、恥かかせちゃいけないな、と。感謝や謙虚さをわきまえるようになった」

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 ◆勝利の瞬間 両親号泣

 岩佐選手の父親、正利さん(61)は9月13日、大阪で行われた息子の世界戦を妻の智和子さん(57)、娘の望美さん(30)と共にリングサイドで見守った。打たれても打たれても小国選手が前に出て来る試合の流れは、約12年前の選抜で小国選手と高1の岩佐選手が対戦した試合と同じ流れだったことを思い出し、「レフェリー、早く試合を止めてくれと祈っていた」。勝利の瞬間は夫婦で号泣。新王者の息子が実家に報告に来たのは18日早朝。「応援してくれた人に恩返しできたな。でかした! と声をかけました」