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全国初の農業専門職大学設立へ 静岡県、32年開校目指し基本構想に着手

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全国初の農業専門職大学設立へ 静岡県、32年開校目指し基本構想に着手

 ■県立農林大学校を母体に

 県は、県立農林大学校(磐田市富丘)を全国初の農業専門職大学へ移行させることを目指し、基本構想の策定に着手した。今秋中にも構想をまとめ、平成32年4月に開学させることを目指している。

 昭和24年からの歴史を持つ同校は、高卒者に2年または4年の専門的な職業訓練を行い、次代を担う農業者を育ててきた。移行予定の専門職大学は、5月の学校教育法改正で設置が決まった、IT(情報技術)や観光などの成長分野で即戦力の人材育成を目指す新形態の高等教育機関だ。

 農林畜産業が盛んな本県は、生産のみならず加工や流通までを見通した「農業の6次産業化」を打ち出しており、農林大学校を専門職大学に移行させることで、生産技術に加えて、食品加工や流通、農業経営などの応用力を持つ人材を育てたい考え。卒業者には学位が与えられるため、農業者の地位向上につながるとの期待もある。

 県教育委員会は商工業や芸術、スポーツといった「実学」重視を掲げており、専門職大学はこの方針にも合致する。

 こうした流れを受けて県は、農業関係者も加わる「専門職大学基本構想委員会」を立ち上げ、農業専門職大学のあり方について検討を始めた。

 県が行ったアンケートでは、農業を学べる教育機関への進学を希望する高校生は、農林畜産業に不可欠な植物や動物の基礎知識に加え、食品加工や流通、食文化、食品安全といった周辺分野の幅広い知識習得を希望していることが判明。一方で、農林業法人の側は、採用する学生について植物栽培や家畜飼育での基礎知識、基礎技術を重視しており、学生が望む教育内容と採用側が希望する人材像との間に大きなギャップがあることが分かった。

 同委員会ではこの結果を踏まえ、専門職大学では生産から6次産業化までまとめて学べるカリキュラムを作成し、経営管理、食品加工から最先端のICT(情報通信技術)まで幅広い知識を持つ農業者の育成を基本理念とする方針を打ち出した。教員の4割以上を農林業従事者など実務能力を持つ人材とし、40人以下の少人数で授業を行い、座学よりも実習を重視する。定員は、現在の農林大学校と同規模の短大部100人、4年制部20人とする。

 委員会メンバーの吉林章仁副知事は、「農業専門職大学のあり方は、農業高校卒業生の高度な受け皿として、50年先の農業を見据えて検討している。農作物の海外販路拡大は本県の課題であり、専門職大学には国際的なマーケティングの視点も取り入れたい」と話している。(田中万紀)

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【用語解説】専門職大学

 観光、農業、ICTといった成長分野の専門技能を持つ職業人を養成するため、実践的な職業教育を行う新しい高等教育機関。今年10月ごろに国が設置申請の受け付けを始めて平成31年春以降に順次開学させていくスケジュールを描く。研究・教育中心の大学とは異なり、学生は特定職種の実務に直接必要な知識と技能の習得を目指す。そのために(1)実習は卒業単位の3~4割で、うち約5割を企業など現場での実務実習にする(2)専任教員の4割以上を経験5年以上の実務家とする(3)入学前の実務経験を単位に認定する(4)産業界や地域の代表者を交えた協議会で教育課程を編成する-といった仕組みが検討されている。