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紀伊半島豪雨から6年 被災の「上湯温泉」“復活” 十津川の乾さんが自費で整備 奈良

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紀伊半島豪雨から6年 被災の「上湯温泉」“復活” 十津川の乾さんが自費で整備 奈良

 十津川村の清流沿いに湯煙を揺らす河川敷の名物露天風呂「上湯温泉」が7月、6年ぶりに“復活”した。平成23年9月の紀伊半島豪雨で跡形もなく流された上湯温泉はかつて、地元民や観光客が集う憩いの場だった。再生のために立ち上がった同村の建設・電機会社社長、乾敏志さん(56)は、「豪雨で減った観光客を呼び戻したい」と力を込める。

 十津川村出谷を流れる上湯川のほとり。江戸時代中期に里人が見つけたとされる秘湯「上湯温泉」は古くからこの場所で、地元の人やアユ釣り客の疲れを癒やしてきた。大自然に抱かれながらつかる源泉掛け流しの露天風呂は開放的で、乾さんは「子供のときは川遊びをして、そのまま露天風呂に入るのが日課やった」と振り返る。

 だが、6年前の紀伊半島豪雨は美しい里山の風景を一変させた。川は山から流れ出た大量の土砂に覆われ、露天風呂も流された。被災後は観光客も激減、上湯温泉を管理する旅館は再整備に着手することができず、放置された河川敷には大きな岩が転がり、雑草が生い茂った。

 それでも、6年という歳月が川に再び、澄んだせせらぎを呼び戻した。2~3年前から水が流れ始め、昨年ようやくアユが戻り、釣り客も増えてきた。被災前からの常連客も多く、乾さんはアユ釣り仲間や観光客からたびたび「温泉はまたやらんのか」と尋ねられたという。

 今年に入り、「思い入れのある場所をなくすわけにはいかん」と、上湯温泉の再整備を決意。旅館側の許可を得て、6月から工事に着工した。以前は川から50センチの高さにあった浴槽を約1・5メートルにまでかさ上げし、大きさも幅約4メートル、長さ約15メートルと一回り大きくした。

 湯船にたゆたえば、清涼な風が吹き抜け、木々の香りや虫の音になごむ。再びこの場所に芽吹いた自然の息吹に、「被災地」から立ち直りつつあることが実感できる。

 数百万円の工事費はすべて自費だが、「村の活性化のため誰かが努力せんといかん」と乾さん。人々が集う温泉とこの村を、これからも守り続けるつもりだ。

 「上湯温泉」は午前9時~午後5時。木曜定休。入浴料は大人500円。子供300円。問い合わせは、乾さん(電)090・5009・9041。