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【甲信越ある記】忍者からくり屋敷(長野市戸隠)

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【甲信越ある記】
忍者からくり屋敷(長野市戸隠)

 ■迷子にご用心!? 驚く仕掛け満載

 畳敷きのこの部屋からどうしたら出られるのだろう。黒色に塗られた引き戸を左右に動かしても、びくともしない。胸に不安がよぎる。引いてダメなら押してみるか。すると扉が回転し、人一人ようやく通れる隙間ができた。忍者屋敷によく見られる「どんでん返し」という仕掛けにあぜんとする。

 屋敷には、敵の侵入を防ぐため、階段の踏み面を一歩ずつ上がるほどに先端部分の段鼻が下がる「落とし階段」、どうしてこんな所にあるのかと、その建築技法に舌を巻く「隠し階段」など、ふだん住み慣れた住居にはあり得ない仕掛けが満載だ。

 「忍者からくり屋敷」を管理する山本幸彦さんは「決まっているのは入り口と出口だけ。屋敷に入れば、どのコースをどう通るかは、来場者の気の向くままです」と話す。人によって15分くらいで出てくるが、1時間以上かけてようやくたどり着く人もいるそうだ。

 時間をかけたからといって、仕掛けのすべてを体感できるわけではない。例えば、「隠し通路」につながる仕掛けは、よほど運よく探し当てたか、来慣れた人でないと絶対に分からないだろう。

 迷子になる来場者も、たまにいる。でも、屋敷には「お助け電話」なるものが設置されていて、「救出態勢」にも万全を期している。

 「非常口の誘導灯まで仕掛けと勘違いされたことがある」。山本さんはそう笑う。

 来場者への思いやりだな、とつくづく感じたのは、山本さんは、屋敷のスタッフらと考えて、「どんでん返し」の扉とか、仕掛けを施した箇所をちょくちょく変えていることだ。こうした配慮があれば、幾度となく訪れてもその時々で新たな驚きを味わえる。

 屋敷が建造されたのは、戸隠流の忍術を完成させた仁科大助(別名・戸隠大助)ゆかりの地であることにちなむ。戸隠流とは、武器を持たずとも関節技といった体術で敵を倒すことを極意にしているという。

 それでも、戸隠流ならではの武器はあって、それらは屋敷に隣接する「戸隠流忍法資料館」に展示されている。武器としての機能はもとより、生活に役立つ道具でもあるらしい。

 ことのほか「センバン」と呼ばれる手裏剣は四角形に近い形で、中央の穴はくぎ抜きとして利用されていた。ほかにも「鎌槍」「手かぎ」「くさりがま」など、展示された忍具は約500点を数える。

 「われらの里に伝わりし秘術-戸隠流を伝授いたそう」

 屋敷のパンフレットにこうある。「伝授」してもらおうではないか、と少しばかり勇んで訪れてはいかがか。(松本浩史)

                   ◇

 ◆忍者からくり屋敷 長野市戸隠3688の12。上信越自動車道須坂長野東インターチェンジ(IC)から約35キロ。信濃町ICから約16キロ。JR長野駅から戸隠キャンプ場行きバスに乗り、奥社入口で下車。営業時間は午前9時~午後5時(最終受付は午後4時半)。敷地内には戸隠に伝わるカゴやワラジなどの民具を展示した「戸隠民俗館」も建つ。大人600円、小中学生400円。