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名物古書店の「宝」活用 マンガミュージアムで地域振興 熊本・合志市

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名物古書店の「宝」活用 マンガミュージアムで地域振興 熊本・合志市

漫画好きの市民でにぎわう「合志マンガミュージアム」。収蔵されているのは全て橋本博館長(右)が長年集めたコレクションだ 漫画好きの市民でにぎわう「合志マンガミュージアム」。収蔵されているのは全て橋本博館長(右)が長年集めたコレクションだ

 熊本県合志市の旧西合志郷土資料館が「合志マンガミュージアム」に生まれ変わった。1万5千冊の漫画が自由に読めるとあって、夏休み中の子供やファンでにぎわっている。合志市とNPO法人がタッグを組み、「漫画を読み、観(み)て、学べる」施設を目指す。 (谷田智恒)

 壁一面の本棚に、県産杉材でつくったキューブ型(立方体)の閲覧コーナー。ミュージアムのつくりには、遊び心が詰まっている。

 「もともと漫画は、机に向かって読むものではない。キューブは座る場所によって、縁側や押し入れの中のようになったりする。好みのポジションを見つけ、思い思いに楽しんでほしい」。館長を務める橋本博氏(68)は、こう語った。

 分類も工夫した。人気漫画を1960年から10年刻みでまとめて、本棚に並べている。橋本氏は「人生で最も漫画に親しむのは、たいてい10代の頃でしょう。生まれた年に10年を足した本棚をのぞけば、子供時代の懐かしい作品が見つかるようにした」と語った。

 そのほか、戦時中や戦後の貴重な紙芝居や風刺画、漫画資料などもケース内で展示する。いずれも橋本氏が少年時代から集めたコレクションだという。

 ■膨大なコレクション

 橋本氏は3歳から漫画に夢中になった。県立熊本高から熊本大へ進み、県庁職員などを経て、大手予備校講師や県立高校教員も経験した。その間、漫画を読むのをやめたことは一度もない。筋金入りの漫画好きだ。

 現在は崇城大の非常勤講師も務める。崇城大は九州初の「マンガ表現コース」を、芸術学部に開設したことで知られる。

 そんな橋本氏は、予備校講師時代の昭和60年、熊本市内で漫画専門の古書店「キララ文庫」を開業した。「日本中から漫画ファンが集まり、経営は順調だった」という。

 だが、店舗近くの河川改修工事に伴い、立ち退きを迫られ、平成27年に閉店した。その際、約15~16万冊と推定される橋本氏のコレクションのうち7万冊を、合志市が預かり、庁舎内の空き室で保管するようになった。

 橋本氏と合志市の関わりができたのは、24年夏だった。

 熊本市内で、橋本氏も協力し、漫画企画展が開催された。その会場に現在、合志市副市長を務める浜田善也氏が訪れた。浜田氏も漫画好きだ。中学生当時は、「タイガーマスク」が掲載された雑誌「少年マガジン」の発売を心待ちにしていた。

 橋本、浜田両氏は、アニメ・マンガを生かしたまちづくりで意気投合した。

 ■親子3世代で来館を

 合志市は、橋本氏のコレクションを生かしたミュージアム整備に動いた。

 西合志図書館に隣接する旧西合志郷土資料館の建物を改修し、今年7月、公設の漫画図書館「合志マンガミュージアム」がオープンした。

 橋本氏が市に預けた約7万冊のうち約1万5千冊を常時公開する。館内での閲覧のみで、貸し出しはしない。地元出身の、うすた京介、中川沙樹ら漫画家4氏の作品や、「食と農」「仕事」などテーマ別書棚も設けている。

 運営は、橋本氏が代表を務めるNPO法人「熊本マンガミュージアムプロジェクト」が受託した。市が任用する地域おこし協力隊員も手伝う。

 漫画を「読む」ほか、「観(み)る」「学ぶ」を目標に、企画展などにも力を入れる。マンガを描く体験イベントも開催する予定。

 夏休み中のミュージアムは連日、にぎわいを見せる。橋本氏は「祖父母、親子の3世代で来館し、漫画を楽しんでもらいたい。見たことがない、運命を変える漫画との出合いを提供しながら、市の地域振興や活性化にも貢献したい」と語った。

 合志マンガミュージアム 午前10時~午後6時。月曜と月末休館。入場料は大学生以上300円、中高生100円、小学生以下無料。年間パスポートは大学生以上1500円、中高生500円。熊本県合志市御代志1661の271。(電)096・273・6766。