産経ニュース

日本人の「学びの軌跡」たどる 練馬・唐沢博物館に教育史料7000点

地方 地方

記事詳細

更新


日本人の「学びの軌跡」たどる 練馬・唐沢博物館に教育史料7000点

 教育史研究家、唐沢富太郎(1911~2004年)が生涯をかけて収集した研究資料を展示した唐沢博物館(練馬区豊玉北)が静かな注目を浴びている。江戸時代の寺子屋から現代の学校に至る日本人の学びの軌跡や変遷を、実際に使われた教材、学校教具など「モノ(物)」からたどることができる。明治期や戦前の教育の実像を伝える貴重な資料も豊富で、海外からも来館が絶えない。

 ◆実際に使った物収集

 個人が運営する資料展示施設と聞いて来館した人は資料の豊富さ、多彩さに一様に驚かされる。富太郎は東京教育大学教授だった昭和37年に欧米を視察したのを機に、文献による研究ではなく実際に子供が学びや遊びに使った物を集めて教育の実像を浮き彫りにすることに心血を注ぐようになったという。

 古い物が捨てられ失われていった時代、全国を歩いて私財を投じ、破棄される寸前だった終戦後の墨塗り教科書から子供たちの玩具までを大量に収集。ときにはトラックや貨車を借りて運び、自宅は収集物に埋もれた。

 自宅敷地に建てた収蔵庫を改築し、平成5年に博物館をオープン。数万点の収集物のうち厳選した7千点余りを展示している。

 明治5年の学制施行後、最初に作られた官製の理科掛図(かけず)(壁に掛けて図を指し示しながら教える教具)、明治6年に発行された旧文部省編纂の教科書「小学読本」、視聴覚教育の走りとなった幻灯機とさまざまなガラス絵、各時代を映す子供のノートや通知簿、筆記具なども並ぶ。

 栃木県真岡市にあった寺子屋を再現したコーナーには、看板や机、往来物と呼ばれた教科書、清書帖(ちょう)などすべて本物が使われている。

 ◆教育勅語や御真影も

 珍しいのは、戦前教育の象徴とされる明治23年発布の教育勅語(ちょくご)。森友学園問題で最近も話題になったが、かつて全国の学校に下賜された実物はあまり現存していない。天皇、皇后の肖像を収蔵していた白木造りの御真影奉安殿(ごしんえいほうあんでん)や、非常時に持ち出すための背嚢(はいのう)も実物が展示されている。

 教育勅語や御真影はかつて、火災で焼失しただけで校長が不敬だとして懲戒を受けた時代もあっただけに、富太郎はどこで入手したかについて口にしなかったという。

 富太郎の三女で館長の唐沢るり子さんは「先人たちの学びや遊び、暮らしの英知を、実際に使われたモノが何より雄弁に教えてくれる。急速な発展を遂げた日本人の人間形成を知る手掛かりになるとして、最近もアジアのメディアが取材に訪れた」と話す。

 見学には電話予約が必要で、小人数での来館が望ましいという。問い合わせは(電)03・3991・3065。