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【クールにいこう!千葉涼み】熊野の清水(長南町)

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【クールにいこう!千葉涼み】
熊野の清水(長南町)

 ■豊富な水量、伝説残る「弘法の霊泉」

 千葉市内から車で1時間ほど、豊かな自然に囲まれた長南町には、山あいを清らかな川が流れ、ホタルを鑑賞できるスポットもある。町内にある「熊野(ゆや)の清水」は、弘法大師が布教で立ち寄った際に干魃(かんばつ)に苦しむ農民を救うために法力で湧き出させたという伝説の残る「弘法の霊泉」といわれる名水。豊かな水量を誇り、地域住民の生活を支え、観光客も訪れるスポットになっている。

 熊野神社と書かれた鳥居と農産物の直売所以外は、森や水田に囲まれ、山間部の田園地帯といったのどかな風景が広がる。隣接する駐車場に車をとめ、神社の鳥居をくぐると水のせせらぎが聞こえ、森が日差しを遮り、ひんやりとした空気が肌に感じられた。

 そして間もなく、澄んだ泉と注ぎ込む湧き水が目に入る。熊野の清水だ。泉の傍らにはひしゃくがあり、くんで手にかけるとひんやりと冷たさを感じられる。注ぎ込む湧き水を一口飲むと、かすかな甘さが感じられるような冷たく飲みやすい味がした。

 町産業振興課によると、熊野の清水は由来通り豊富な水量を誇り、水不足の時も枯れることはないと伝わる。その豊富な水量から室町時代には一体の領主であった鎌倉の鶴岡八幡宮直営の湯治場として大いに利用されたこともあるとの言い伝えも残る。昭和60年には環境庁(当時)が選ぶ、名水百選に県内で初めて選ばれ、今も近隣住民らの生活用水や農業用水として広く利用されている。

 水くみに訪れていた旭市のパート社員、穴沢剛志さん(66)は「定期的に来ている。水割りの水に使ったり、米を炊くのに使っている。水道水や他の湧き水や井戸水とも全然違う」と話す。

 農産物直売所の隣には、熊野の清水を使ったそばやコーヒーを販売する「がんこ茶屋」がある。店主の坂爪潤さん(68)は東京でのサラリーマン生活を経て、熊野の清水の水の良さに魅せられ、約30年前に長南町に移住。自身も有機栽培にこだわる農業を行う傍ら、15年ほど前から店を始めたという。気さくな人柄から、水をくみにくる地域住民の中にはこの店の常連客も多いという。

 この店の夏のお薦めは熊野の清水を使って8時間かけて抽出した「水出しアイスコーヒー」(600円)。もともとは、湧き水を使って調理したそばを中心に出していたところ、立ち寄ったお客から食後に「水がいいのでコーヒーが飲みたい」といわれることや、食事はいいのでコーヒーや紅茶を飲みたいという人も多く、始めたところ人気を博し、看板メニューの一つになったという。

 坂爪さんによると、水出しでゆっくり抽出するのは「水自体のソフトな味わいを生かすことを心がけている」ためだという。今後も水を生かしたメニューで訪れる人をもてなしていく。

 町内にはこのほかにも、晴れた日の朝には、東京スカイツリーや九十九里浜が一望できる標高180メートルの野見金山にある野見金公園や、豊かな自然を生かしたゴルフ場も点在する。

 しばし、都会から離れ、豊かな自然に包まれた名水に出合ったことで、気分的にも少し涼しくなった気がした。また時間があるときに来ようと思って、取材を終えて、帰路についた。(永田岳彦)

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 ■熊野の清水 長南町佐坪字滝ノ上2336。車なら茂原長南インターから約15分。バスならJR茂原駅から給田経由大多喜行き「市野々」下車徒歩10分。入場無料。【問】長南町産業振興課(電)0475・46・3397。